「お礼を直接申し上げたいのです。ほんの少しのお時間で結構ですから」
「ご当主様は急用ができて留守だ。お前ごときに会うほど、お暇な方じゃないんだよ」
「そうですか……」
「ほら、早く出て行きな! こっちはお前みたいに物乞いの底辺、見るのも嫌なんだよ! 昔はこの家と並ぶ名家だったか知らないけど、落ちぶれた風情で調子に乗って、ああいやだいやだ!」

追い立てられて、宙は門から出るしかなかった。
ガタンと門が固く締められ、その大きな音にビクリとなる。

毎月のことだけれど、こうして冷たい仕打ちを受けると、まるで直接鞭打たれたかのように胸が痛くなる。

けれども、これを我慢しないと宙は生きていけないのだ。

(物乞いか。ほんと、その通りだよね)

現金が入った封筒を鞄に押し込んで、宙はとぼとぼと歩き始めた。