また、あの変な夢を見た。
ゆっくりと起き上がると、頬からつーっと雫が流れ落ちた。
(やだ、私、泣いていた……?)
ごしごしとパジャマの袖で拭う。
あの夢を見て泣くなんて、初めてだ。
紅い瞳の――男の人。
血のような、炎のようなあの瞳は、人間じゃない。
妖だ。
日河宙(ひかわ そら)は、パジャマの胸元を握った。
まだ余韻が残る、きゅう、とした胸の痛みを抑えるように。
(……どうして妖に、こんな気持ちになるんだろう……)
あの夢を見るようになって数日経っていたが、こんなにリアルな感情を覚えることはなかった。
夢が強くなっている。
おかしな言い方だけれど、つい、そう考えてしまう。
でも、いつまでも布団の中でもやもやしている時間はなかった。
学校に行く準備をしなくては。