老婆には親族がいなかったため、家の処理が滞っているらしい。

「ぼろ屋だよねぇ。早く売れるか壊すかしないと、おばあちゃんも落ち着かないよね」

なんて雪はよくぼやくけれども、雪がたまに、老婆との思い出を懐かしむように空き家に帰っていることを、宙は知っていた。
今は宙を慕っているけれども、雪にとってやはり老婆は特別な存在なのだ。
亡骸になってしまった老婆の死を嘆くように、飲まず食わずのまま、ずっとそばに寄り添っていたくらいなのだから。

雪は老婆とともに成仏できたはずだ。
でも、こうして宙のもとに留まった。

(きっと、私が一人ぼっちだったのを知っていたからだよね)

一人ぼっちだった老婆のそばにずっとずっといてあげたように、孤独だった宙の元に来てくれたのだろう。

(優しい子……)

宙は雪の毛をそっと撫でた。