放送委員の初回の集まりは、その日の六限目となった。
 一年生から三年生まで各クラス一名ずつ選出された放送委員が、一つの教室に集まる。
 萌は一年二組だが、一組と三組の代表の子は二人とも知らない顔だった。一組の女子が、三組の委員の男の子に話しかけているのが聞こえてくる。

「えー! なんで駿介ここにいるの? 絶対体育委員だと思ったのに!」
「…………じゃんけんで負けたんだよ」
「そうなんだ! みんな駿介と同じ委員がやりたくて、体育委員がすごく人気だったんだよ」
「ふぅん」

 萌の心の声と、三組の男の子の声が重なった。この男の子目当てで、体育委員があんなに人気だったのか。
 興味なさそうに相槌を打つ男子を、萌はちらっと横目で盗み見る。
 確かに整った顔立ちをしていた。幼馴染の陸は中性的でかわいらしい顔をしているが、この男子は分類するならかっこいい系だろう。
 今は机に頬杖をついて猫背になっているけれど、背も高そうだ。モテるんだろうな、と考えながら黒板の方に視線を戻すと、三年生の放送委員長が黒板に曜日を書き記していた。

「放送委員は主に給食の時間に音楽を流して放送するのが仕事です。月曜日から金曜日まで、各二人ずつ。ペアは公平にくじ引きで決めます。一年間組み替えはしないので、上級生や下級生と組むことになっても仲良くしてくださいね」

 じゃあくじを回します、と言って小さな箱が三年生から順に回される。萌が取るときには二枚になっていたが、折り畳まれた紙の綺麗な方を手に取った。開いてみると木曜日と書かれている。
 月曜日から金曜日までのペアが決まり、萌が組むことになったのは一年三組の男子だった。同じ学年でペアを組めるのはラッキーだったが、先の話から察するにかなり人気のある人であることは間違いないので、少しだけ心配になる。
 妬まれたりしませんように。そう心の中で呟いて、萌は再びペアになった男子の方に目を向ける。どうやら彼も萌の方を見ていたようで、ばっちり目が合った。

「一年二組の雨宮萌です、よろしくお願いします」
「俺は三組の矢吹駿介。よろしく」

 にっと歯を見せて笑った顔が爽やかで、モテるのも分かる気がするなぁ、と考えながら萌は笑みを返した。