
作品番号 1670655
最終更新 2022/06/17
緑色に光る楽器のボディと、そこから伸びる四本の弦を、巧みに操る長い指。
少し茶色がかった、私と同じゆるいくせっ毛。
弧を描くやさしい幅広の二重まぶた。すっとした鼻。
袖まくりした色白の腕と、似合わない筋肉。
その人の周りだけ、虹色に光っているように見えた。
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ドジで泣き虫、おまけに怖がりの私を、きみだけは真っ直ぐ見つめてくれた。
「変だとか、思わない?」
「思わないよ。花音ちゃんみたいな考えの方が、きっとずっといいよ」
きみといると周りの景色がただの背景になって
胸がどきどきして、リズムを奏ではじめる。
「ねえ、花音ちゃん。詩を書いてよ」
あの日きみは世界でいちばん綺麗な景色をくれて、いちばんの恋をつれてきた。
私のだいじな初めての恋。
それは、純粋なはじめての恋の物語。
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野いちごに載せていた作品です。
- あらすじ
- ドジで泣き虫、おまけに怖がりな花音は、学校中で天然認定されている変な意味で有名人。いつも自分に自信が持てない花音だったが、学園祭で観たバンド『ブラックコーヒー』のメンバー・ノゾムに歌詞の依頼をされてしまう。いつも優しいノゾムのことが、次第に気になるようになってきて……。初めての恋を知って、自信を持てるようになるまでの物語。