おばあさんは何度か咳を繰り返してから、喉を少しヒューッと鳴らして、呼吸を整えた。
「ごめんなさいね、季節の変わり目に少し風邪を引いちゃったみたいで」
「そうだったんですか。すみません、こんな寒い中引き止めてしまって……。お墓参り、足元お気を付けて」
「ありがとうね、またね神代君」
 心配しながらも、俺はおばあさんが角を曲がるまで見送った。
 心臓はドクンドクンと嫌な音を立てていて、不安でいっぱいになっている。
 もし、本当に青花が永久コールドスリープに入ってしまったら――、俺たちの間には、あとどれくらいの時間が残っているんだろう。
 考えただけでも、目の前が真っ暗になっていく。

 永遠に続けばいいのにと思えば思うほど、時間は一瞬で過ぎていく。
 人生は限られていて、大切な人と一緒に過ごせる時間は、思っている以上に長くない。
 焦っても不安になってもどうしようもないのに、俺は何か自分にできることはないのか、必死で頭をフル回転させていた。