困ったように笑うおばあさんにつられて、俺も眉を下げながら微かに笑った。
 限られている人生の中で、大切な人と過ごす時間は、なんて尊いものなんだろう。
 頭の中に青花の顔がいっぱい浮かんで、再び胸が苦しくなる。
 青花と過ごす時間は、いつも一瞬で、キラキラ輝いていて、切ない。
 永遠に続けばいいのにと思えば思うほど、時は一瞬で過ぎていくから。
「また青花が目覚めたら、一緒に遊んでね」
「はい、もちろん」
 即答すると、おばあさんは少しだけ目を伏せて、何かを考えるようなそぶりを見せる。
 そして、ためらいがちに口を開いた。
「あの子、永久コールドスリープになる可能性が高いから……」
「え……」
 突然の発言に、俺は一瞬目の前が真っ白になった。
「もし外で倒れるようなことがあったら、永久コールドスリープを検討するって、先生に事前に言われてたのよ」
 明らかにショックを受け固まっている俺に、おばあさんは心配したような様子で説明してくれた。
「永久って……、それって、治療法が見つかるまで永遠に起きないってことですか?」
「そうなるわね……、大変な道のりだけど」
 そこまで言いかけると、おばあさんはいつの間にか目尻に滲み出てきていた涙をそっと指で拭う。
 おばあさんの方が、ずっとずっと悲しいはずなのに、俺は酷なことを聞いてしまった。
 すぐに反省したけれど、でも、聞かずにはいられなかった。
 だって、信じたくなくて。
 青花がもう二度と目を覚まさないかもしれないだなんて、考えたくもなかったから。
「元々ね、四季コールドスリープはそんなに長く続けられる処置じゃないのよ。何度も起きることを繰り返してたら、その分もちろん病状は悪化する。今回はそれがただ早まるかもしれないという話でね……」
「そう、だったんですか……、すみません、俺何も知らずに……」
 前髪をくしゃっと押さえながら、動揺を全く隠せずに、情けない言葉を返す。
 青花は、それを全部知っていた?
 覚悟した上で、文化祭に来ていた?
 俺はいったい、青花の何を知った気でいたんだろう。
 何も知らない癖に、青花を守ろうとしていただなんて……。自分に失望して、言葉が出てこない。
「ショックだとは思うけど……ゴホッゴホッ」
「大丈夫ですか!」
 突然咳込みだしたおばあさんの背中を、俺は慌てて摩る。