金曜の夜から朝までぶっ通しで作業してしまった俺は、いつの間にか机の上で寝てしまっていた。
ハッと起きたときには、時刻は八時を示していた。夜なのか朝なのか一瞬混乱したが、寝癖がついたまま一階へと下りる。
休日は家族皆遅くまで寝ているので、俺はひとり静かなリビングで水を飲みながらテレビをつけた。
『コールドスリープの処置後、世間との壮絶なギャップと戦う人を特集します』
滑舌のいい女性アナウンサーが、一言真剣な声で読み上げた直後、CMに入った。
世間を最近賑わせている、あるコールドスリープ患者のニュース。昔は四季コールドスリープという処置はなく、治療法が見つかるまでずっと眠り続けるしかなかったらしい。
五年以上もの間眠り続けたという元SEで三十代の男性は、起きた世界では両親が他界しており、ITの進化にもついていけなかったため、就職していた会社にも戻れず、途方に暮れているという。
『ずっと眠っていた方がまだマシだった……』
そう、涙ながらに語る男性が、モザイク越しに肩を震わせている。
センセーショナルな映像を観ながら、俺はずっと青花のことを考えていた。
季節に置き去りにされることが怖いと泣いていた彼女は、今眠りの中にいる。
青花にとって文化祭はまさに昨日の出来事で、俺にとってはもう一ヶ月以上も前のこと。どうあがいても埋められないギャップに、胸が苦しくなる。
『大切な人と〝今〟を過ごしたい……そう思う人もきっといるはずですよね』
『周りからの、生きてほしいという願いで生かされている……そういった苦しみもあるのかもしれません』
ニュースを見てだんだん息が詰まってきた俺は、ぶつっとテレビを消して、椅子にかけっぱなしだった上着を羽織る。コンビニでも行って気分転換をしようと思ったのだ。
すると、微かに後ろから足音が聞こえて、俺は階段の方を振り返った。
「……どっか出かけんの? こんな朝から」
二階から下りてきたのは俊也で、手には空っぽになったマグカップを持っている。
あの事件から一ヶ月後。家の中はやはり少しぎくしゃくしていたものの、俊也はその後暴れることはなく、大人しかった。俺は少し気まずく思いながらも、彼の問いかけに「ああ」と頷く。
俊也は「ふぅん」と興味なさげに相槌を打ってから、お湯を沸かしにキッチンへと向かう。
ハッと起きたときには、時刻は八時を示していた。夜なのか朝なのか一瞬混乱したが、寝癖がついたまま一階へと下りる。
休日は家族皆遅くまで寝ているので、俺はひとり静かなリビングで水を飲みながらテレビをつけた。
『コールドスリープの処置後、世間との壮絶なギャップと戦う人を特集します』
滑舌のいい女性アナウンサーが、一言真剣な声で読み上げた直後、CMに入った。
世間を最近賑わせている、あるコールドスリープ患者のニュース。昔は四季コールドスリープという処置はなく、治療法が見つかるまでずっと眠り続けるしかなかったらしい。
五年以上もの間眠り続けたという元SEで三十代の男性は、起きた世界では両親が他界しており、ITの進化にもついていけなかったため、就職していた会社にも戻れず、途方に暮れているという。
『ずっと眠っていた方がまだマシだった……』
そう、涙ながらに語る男性が、モザイク越しに肩を震わせている。
センセーショナルな映像を観ながら、俺はずっと青花のことを考えていた。
季節に置き去りにされることが怖いと泣いていた彼女は、今眠りの中にいる。
青花にとって文化祭はまさに昨日の出来事で、俺にとってはもう一ヶ月以上も前のこと。どうあがいても埋められないギャップに、胸が苦しくなる。
『大切な人と〝今〟を過ごしたい……そう思う人もきっといるはずですよね』
『周りからの、生きてほしいという願いで生かされている……そういった苦しみもあるのかもしれません』
ニュースを見てだんだん息が詰まってきた俺は、ぶつっとテレビを消して、椅子にかけっぱなしだった上着を羽織る。コンビニでも行って気分転換をしようと思ったのだ。
すると、微かに後ろから足音が聞こえて、俺は階段の方を振り返った。
「……どっか出かけんの? こんな朝から」
二階から下りてきたのは俊也で、手には空っぽになったマグカップを持っている。
あの事件から一ヶ月後。家の中はやはり少しぎくしゃくしていたものの、俊也はその後暴れることはなく、大人しかった。俺は少し気まずく思いながらも、彼の問いかけに「ああ」と頷く。
俊也は「ふぅん」と興味なさげに相槌を打ってから、お湯を沸かしにキッチンへと向かう。