なんで俺が弟のせいで進路を変えなきゃならないのかという不満が、目の前にある面倒なことから全部逃げてもいいという理由になっていた。
そうやってずっと、自分を正当化して生きていた。
最初から何も生きる目標なんか、なかった癖に。
「兄貴はいつも面倒なことから逃げるクソで、専業主婦の母親はヒステリックな学歴主義者で、父親は子供のことには何も関与してこないただの空気……、誰も人の気持ちを考えてない。自分のことしか考えてない、本当にゴミみたいな家族だよ!」
「俊也……!」
暴言を吐いて暴れだす俊也を、俺はうしろから羽交い絞めにして止めたが、俊也は手当たり次第周りにある雑誌や時計を床に投げつけていく。
そして、俊也は母親を見下ろしながら言葉の暴力を続けた。
「俺がM学園行きたい理由が分かるか⁉ あんたら全員見下すためだよ! 高学歴になって、いいとこ就職して家族のことなんか全部忘れるためだよ! 俺はずっと、クソみたいな〝今〟を忘れるために生きてんだよ‼ 罪悪感消すために、自分のために唐突に謝罪してきやがって……、そんなんで簡単に許してたまるかよ‼」
俊也の言葉が、剣みたいに尖って、胸に突き刺さる。
今を忘れるために生きているだなんて、そんな言葉を、家族に言わせている。
向き合ってこなかったこと全てが、今目の前にある。
母親は放心状態のまま固まっていて、何も言葉が出てこない様子だ。
興奮しきった様子の俊也は、腕を振り払って俺から離れ、こっちを睨みつけてくる。
「何か不満があるなら言えよ。いつもそうやって傍観してるだけでさ……」
完全に、敵を見るような瞳で、俊也はそう言い捨てた。
俺は割れたお皿の破片を拾って、そっと言葉を返す。
「何もない。全部お前の言う通りだから」
きっぱりと伝えると、俊也は呆れたように笑う。
いつもなら、もうこのまま、自室に戻って何もなかったことにしているだろう。
カンニングを疑われ、友達も失ったあの事件をきっかけに、自分に価値がないことを思い知って、諦め癖がついていたから。
でも、そうじゃない。それじゃ、ダメなんだ。
『本当は私、大切な人がいる〝今〟の世界を生きたい』
ボロボロと泣いている青花が、瞼の裏に浮かんでくる。
大切なことから逃げ続けていたら、望んだ未来なんて永遠にやってこない。
そうやってずっと、自分を正当化して生きていた。
最初から何も生きる目標なんか、なかった癖に。
「兄貴はいつも面倒なことから逃げるクソで、専業主婦の母親はヒステリックな学歴主義者で、父親は子供のことには何も関与してこないただの空気……、誰も人の気持ちを考えてない。自分のことしか考えてない、本当にゴミみたいな家族だよ!」
「俊也……!」
暴言を吐いて暴れだす俊也を、俺はうしろから羽交い絞めにして止めたが、俊也は手当たり次第周りにある雑誌や時計を床に投げつけていく。
そして、俊也は母親を見下ろしながら言葉の暴力を続けた。
「俺がM学園行きたい理由が分かるか⁉ あんたら全員見下すためだよ! 高学歴になって、いいとこ就職して家族のことなんか全部忘れるためだよ! 俺はずっと、クソみたいな〝今〟を忘れるために生きてんだよ‼ 罪悪感消すために、自分のために唐突に謝罪してきやがって……、そんなんで簡単に許してたまるかよ‼」
俊也の言葉が、剣みたいに尖って、胸に突き刺さる。
今を忘れるために生きているだなんて、そんな言葉を、家族に言わせている。
向き合ってこなかったこと全てが、今目の前にある。
母親は放心状態のまま固まっていて、何も言葉が出てこない様子だ。
興奮しきった様子の俊也は、腕を振り払って俺から離れ、こっちを睨みつけてくる。
「何か不満があるなら言えよ。いつもそうやって傍観してるだけでさ……」
完全に、敵を見るような瞳で、俊也はそう言い捨てた。
俺は割れたお皿の破片を拾って、そっと言葉を返す。
「何もない。全部お前の言う通りだから」
きっぱりと伝えると、俊也は呆れたように笑う。
いつもなら、もうこのまま、自室に戻って何もなかったことにしているだろう。
カンニングを疑われ、友達も失ったあの事件をきっかけに、自分に価値がないことを思い知って、諦め癖がついていたから。
でも、そうじゃない。それじゃ、ダメなんだ。
『本当は私、大切な人がいる〝今〟の世界を生きたい』
ボロボロと泣いている青花が、瞼の裏に浮かんでくる。
大切なことから逃げ続けていたら、望んだ未来なんて永遠にやってこない。