過ぎ去った季節


『師走さんて私生活謎ですけど、普段は何してるんですかー?』
『今はそうですね、ゲームを作ったりとかしてます……』
『えっ、ゲームのプログラミングもできるってことですか? いつか師走さんのゲーム、ぜひやらせてくださいよ!』
 ガンクロさんとのコラボ配信は、思ったよりもスピード感のあるスケジュールで依頼が来て、夢のように時は過ぎた。
【陽キャガンクロさんと陰キャ師走さんのコラボ草】
【師走緊張してて可愛いww】
【またコラボやってほしい!】
 編集時にログを見て改めて実感したけれど、コメント欄もいつになく盛り上がっていた。
 ガンクロさんの話術とエイム力――ゲーム内で敵を狙う力の高さには改めて圧倒される。
 雑談交じりのライブ配信は二時間にもわたり、俺の中で過去一の視聴者数になった。
「青花にも観てほしいな……」
 動画編集中のパソコン画面を見ながら、俺はひとりつぶやく。
 倒れている青花を見たときは、夢か現実かがが分からなくなった。
 信じたくない光景を目の前にして思考が停止してたけれど、体だけは青花の元へ動いてた。
 人々の視線を感じながら、青花をすぐに背負って保健室へと向かい、先生に状況を説明する。冷静に対処したつもりだったけど、本当は不安で押し潰されそうだった。
『約束だよ、禄っ……』
 あのときの青花を思い出すと、胸が張り裂けそうになる。
 自分でも無茶なことを言っていると分かっていたけれど、それくらいしか青花にしてあげられることが思い浮かばなかった。
 本当は病院まで付き添いたかったけれど、ただ邪魔をするだけだと思い、おばあさんからの連絡を待った。
 青花は無事安静状態に戻り、予定通りコールドスリープに入ったと電話で連絡が来たときは、心から安堵した。
 そうして、青花が眠りについて、三週間が経った。
 そう、まだたった、三週間。
「禄ー、俊也ー、ご飯できたわよ」
 階下から母親の声が聞こえて、俺はヘッドホンを外して返事をする。
 今日は塾が休みの日なのか、弟もいるようだ。俊也はすぐに部屋から出ると、俺と階段で鉢合わせないように素早く一階へと駆け下りていった。
「こうして集まって食べるの久々ね」
 過剰な量の揚げ物を運びながら、母親はご機嫌な様子で俺の隣の席に着く。