青花も同じくガンクロさんのファンなので、同じように喜んでくれた。
 これからほかのお店を回る予定だったから申し訳なく思ったけれど、俺は青花の言葉に甘えることにした。
「私、この間にお手洗い行ってくるね。存分に集中して返して!」
「あ、ありがとう。人多いから気をつけてね。教室の前で待ち合わせよう」
 青花を見送って、俺は階段の踊り場でメールを返信する。
 高揚して少し手が震えて、上手く打てない。動画配信をいつまで続けるのかは具体的には考えていないけれど、大学を出るまでの自分の生活の糧にしたいと思っている。
 でもそれはあくまでひとつの理由なだけであって、本当は、青花に楽しんでもらいたいから。
 俺はひとつひとつ大事に言葉を考えて、スマホをタップしていく。
 きっと次の季節には、ガンクロさんとの配信を青花に観てもらえる。そんな風にワクワクしながら、感謝の気持ちを言葉にした。
「よし、戻ろう」
 かかった時間は十分ほどだろうか。メールを打ち終えた俺は、青花と待ち合わせていた2―B教室前に向かった。
 しかしそこに、彼女の姿はなかった。
「青花……?」
 トイレが混んでいるんだろうか。思わずあたりを見回すけれど、まだ青花の姿は見えない。
 俺は壁に寄りかかって彼女の帰りを待つことにした。
 コラボ動画を観て喜んでくれる青花を、想像しながら。