文化祭


 ついに、金曜日になってしまった。
 桐生君とは何だか気まずい空気になると思っていたけれど、彼は禄と私に「この前はごめん。考えが足りなかったかも」と素直に謝ってくれたので、私たちは仲直りのようなものをした。
 私もそこまで傷ついていた訳ではなかったし、「気にしないで」とだけ返した。
 禄も「俺こそごめん」と返して、ひとまず落ち着いた空気になり、文化祭の準備を再開したのだ。
 正直、どうして参加もできない文化祭のために、時間を割かなければならないのだろうとか、禄とゲームをする時間が減っちゃうなとか、そんなことを思っている。
 だけど、禄が意外と協力的で、女子が困っていることは率先して助けていたり、面倒な作業も丁寧にこなしている様子を見れたことは、よかったかもしれない。
 女子からの好感度がしれっと上がっている気がするのは、ちょっと嫌だったけど。
「青花、〝猫と魔女の森〟もう全クリしたんだっけ?」
「うん、ついこの前! ラスト感動的だったー」
 そして今、私達は文化祭の準備を終えて、電車に揺られながらゲームの話をしている。
 時刻はもう十九時近いので、今日も一緒にゲームはできずに解散だけれど、深夜にオンラインゲームを一緒にやる約束をしている。
 まあ、じつは禄に内緒で準備をしていることもあるから、今はオンラインでもちょうどよかったかも、なんて。
 単純な私は、結衣に言われた通り、禄のためにゲームを作ることにした。
 といっても、誰でも簡単に作れる選択ゲームで、すでにテンプレートが用意されているものなんだけど。
 子供でもできる『ゲームプログラミングソフト』を、ひっそり買っていたのだ。
「ねぇ禄は、今はどんなゲームを作ってるんだっけ?」
「んー、今は、もう一回アプリゲームの開発しようかなと思ってるけど」
「どうやっていつもアイディア出してるの?」
 珍しくゲームの開発に関する質問をしてくる私を変に思ったのか、禄は少し不思議そうな顔をしている。
「んー、俺はアプリのランキング見たり、とにかくいろんなゲームをインプットしながらかな……?」
「そっかー、やっぱり一番最初は分かんないことばっかりで大変だった?」
「まあ、そうだね。なんで? 青花も何か作る予定なの?」
「えっ」
 あからさまな質問をしていたせいで、禄に勘づかれてしまった。