即答する師走に、思わずクスッと笑みがこぼれる。
 私と一緒だ。友達がひとりもいないなんて。
『えー、寂しくない? 友達欲しいとかは思うの?』
『どうですかね、いなくても何も不自由してないですけど』
『ドライだねー』
『友達の代わりがゲームなだけなんで、別に普通です』
 友達の代わりがゲームなだけ。
 師走らしい回答に、思わず勇気づけられる。
 そうか、そんな考えもあるんだな。今まで友人に恵まれていたから、急に世界の端っこにいるような気持ちになっていたけれど。
 つい勝手に仲間意識を抱いてしまう。
 師走って、どこに住んでいて、どんな顔をしているんだろう。
『でも師走君、ゲームは話しかけても慰めてもくれなくない? 愚痴りたいことがあったときとかどうすんの?』
『んー、そんなこと今はあんまりないですけど、まあ、しんどいことあっても、大丈夫ってひたすら言い聞かせます、自分に。なかったことにするっていうか』
『えー、大人ー』
 この人、私と一緒だ……。
 同じ考えの人がいるだけで、心が落ち着く。自分のような人間がいてもいいんだって思える。
 思わず聞き入っていると、コラボ相手がライブ配信に寄せられたコメントを読み上げた。
『〝師走さんが自分と同じすぎて親近感(笑)〟だって。ほかにもこんな感じのコメント来てますねー。孤高の師走さん、悩めるぼっちな視聴者さんたちに何か一言ある?』
『生きづらくても一緒に頑張ろ』
『あはは、棒読みだしテキトー』
〝生きづらくても一緒に頑張ろ〟。
 棒読みなその言葉に、なぜか止まっていたはずの涙が、再びあふれ出してくる。
「うっ、うぅ……」
 私、勝手に一緒に頑張る気持ちでいてもいいかな。
 顔も本名も知らない人だけど。
 何もなくなってしまった私でも、この人なら否定しないでいてくれる気がして。
 分かってもらえなくてもいい。
 同情してもらえなくてもいい。
 肯定されることも、望んでいない。
 ただ、私のような人間も、否定しないでいてくれる人がこの世界にいる。
 たったそれだけで、救われる思いになった。
 どんなに人と生きる時間がずれていっても、置き去りにされても、私は生きていかなければならない。
 できる限り、自分が〝今〟大切だと思えることに時間を割いて、過ごしていこう。
 それが、私らしい生き方だと、いつかそう思えるように……。