その事実が、私の心を簡単に打ち砕いた。
そうか、そりゃ、そうだ。
高校生の三ヶ月なんて、いろんなことが起きて当たり前。美香が新しい友達を作って、私のことを忘れるなんて、当たり前のことだ。
美香を責められる訳ない。でも、「裏切られた」と思っている自分がいる。そんな自分が、嫌いで仕方がない。
「美香……」
ぼそっとつぶやいた声に、運転席のおばあちゃんが「あら美香ちゃんね、声かける?」と返したけれど、私は静かに首を横に振る。
何だか、別の世界の人みたいだ。
キラキラ眩しくて、もうあそこに入れる気がしない。
不思議だ、少し前まで、親友と呼び合っていた友達なのに。
「美香、元気そうでよかった……」
「そうねぇ、制服似合ってるわね」
もし私と美香の立場が逆だったら、私も美香のように、会えない友達のことなんか忘れていくんだろうな。
日々起こる嬉しいこと、悲しいこと、楽しかったことに、あっという間に流されて。
私の病気は、美香にとって自分事ではないから。所詮、他人事だから。
どう触れたらいいのか分からない友人より、目の前にいる明るく気の合う友達に時間を使う。それはごく自然なこと。
大丈夫。きっといつかこの痛みも感じなくなって、流れていく。
私は絶対、大丈夫……。
そう言い聞かせれば言い聞かせるほど、心が凍りついていった。
もう、何にも傷つきたくない。動揺したくない。心を乱されたくない。
何層もの鎧を心に纏っていくうちに、感情が動かなくなっていく。
人と生きる時間が違うということは、生きる世界が違うということなんだ。
だったら、私は、もういいや。
もう何も、大切なものを増やさなくていいや。
大好きなゲームと、おばあちゃんがいればもう、いいや。
その日、私は絶望した気持ちで布団に入り、ひっそり泣いた。
泣き腫らした目でスマホを開き、気分転換になりそうな動画を必死に探す。
師走の動画が新着に上がっており、珍しくライブ配信をしていることを知った。
今日は他チャンネルの実況者と二人でコラボ配信をしているようで、まったり会話をしながらFPSのゲームを配信していた。
『師走君はまだ高校生なんだっけ? 高校で友達いるの?』
コラボ相手の無邪気な質問に、師走は落ち着いた声で答える。
『いないっすね。空気です』
そうか、そりゃ、そうだ。
高校生の三ヶ月なんて、いろんなことが起きて当たり前。美香が新しい友達を作って、私のことを忘れるなんて、当たり前のことだ。
美香を責められる訳ない。でも、「裏切られた」と思っている自分がいる。そんな自分が、嫌いで仕方がない。
「美香……」
ぼそっとつぶやいた声に、運転席のおばあちゃんが「あら美香ちゃんね、声かける?」と返したけれど、私は静かに首を横に振る。
何だか、別の世界の人みたいだ。
キラキラ眩しくて、もうあそこに入れる気がしない。
不思議だ、少し前まで、親友と呼び合っていた友達なのに。
「美香、元気そうでよかった……」
「そうねぇ、制服似合ってるわね」
もし私と美香の立場が逆だったら、私も美香のように、会えない友達のことなんか忘れていくんだろうな。
日々起こる嬉しいこと、悲しいこと、楽しかったことに、あっという間に流されて。
私の病気は、美香にとって自分事ではないから。所詮、他人事だから。
どう触れたらいいのか分からない友人より、目の前にいる明るく気の合う友達に時間を使う。それはごく自然なこと。
大丈夫。きっといつかこの痛みも感じなくなって、流れていく。
私は絶対、大丈夫……。
そう言い聞かせれば言い聞かせるほど、心が凍りついていった。
もう、何にも傷つきたくない。動揺したくない。心を乱されたくない。
何層もの鎧を心に纏っていくうちに、感情が動かなくなっていく。
人と生きる時間が違うということは、生きる世界が違うということなんだ。
だったら、私は、もういいや。
もう何も、大切なものを増やさなくていいや。
大好きなゲームと、おばあちゃんがいればもう、いいや。
その日、私は絶望した気持ちで布団に入り、ひっそり泣いた。
泣き腫らした目でスマホを開き、気分転換になりそうな動画を必死に探す。
師走の動画が新着に上がっており、珍しくライブ配信をしていることを知った。
今日は他チャンネルの実況者と二人でコラボ配信をしているようで、まったり会話をしながらFPSのゲームを配信していた。
『師走君はまだ高校生なんだっけ? 高校で友達いるの?』
コラボ相手の無邪気な質問に、師走は落ち着いた声で答える。
『いないっすね。空気です』