【そうなんだ! もっと仲良くなれるといいね】
【青花も元気になったら一緒に行こうね!】
美香のメッセージは眩しくて、私はただ聞くことしかできない。
 何もできない自分とは違う輝かしい世界を生きる美香が、正直羨ましくもあったけれど、外の世界の話を聞くことは楽しかった。
そんなある日、体調も安定してきたので、コールドスリープの前に美香と会いたいと思った私は、メッセージを送った。
【突然なんだけど、明日の金曜、どこか遊びに行かない? 外出られそう!】
【えー! よかったね! 遊ぼう、遊ぼう! 十七時に駅前で待ち合わせね!】
【やったー! 了解!】
「やった、楽しみだな……」
 コールドスリープする前に、美香に会える。
 いろんな話を聞いて、元気を分けてもらおう。
 私はその夜、久しぶりにワクワクしながらベッドに入った。
 しかし、翌日のお昼頃に届いていたメッセージを見て、私はひどく落胆する。
【ごめん! 風邪引いちゃって今日やっぱり無理かも……。学校も早退しようと思ってて。ほんとごめんね!】
「え……」
 スマホ画面を見ながら、数秒固まる。何度も文字を追って、頭で理解しようとする。
 そっか。それは仕方ないよね。体調が悪いんじゃ……。
 自分に言い聞かせるけれど、なぜか涙が出てくる。
「なんでこんなことで……、バカじゃん私……意味分かんな……」
 自分のメンタルが弱くなっていることにも、激しく落ち込む。今までは、こんな弱い自分じゃなかったはずなのに。
 その日。部屋の中で泣いていることに気づいたのか、おばあちゃんは泣いている理由は聞かずに『今日は買い物に出かけよう』と誘ってくれた。
 正直部屋にこもっていようと思っていたけれど、おばあちゃんの優しさを無下にする訳にもいかず、私は外に出ることにした。
 しかしそこで、私はさらに落ち込むことになる。
 車の中から、高校生になった美香が元気そうに友達数人と笑い合っている姿を見てしまったのだ。
「なんで、美香……」
 信号で車が停止している数秒間。お腹を抱えながら友達の話に笑っている美香を窓越しに見て、心臓がズクンと痛んだ。
 嘘をつかれた。私よりあの子たちといる時間を、優先したかったんだ。
「なんでっ……」
 ――美香にはもう、私の知らない美香の世界が広がっていて、そこに私の居場所は微塵もない。