現実と切り離して遠くの世界に行ける……俺がゲームを好きな理由はそれだ。一言で言うならば、完全な現実逃避。
その現実逃避の世界に突然現れた、眠り姫と呼ばれるクラスメイト。
この不思議な時間を、今は俺も思いきり楽しもうと思った。
「あー! やばいやばいやばい、ごめんもう無理かも!」
いきなり、チームで組んでいるユーザーたちに囲まれてしまったらしい鶴咲は、病棟で逃げ回っている。
いつの間にか離れてしまっていたようで、彼女がいる場所へと急いでキャラを走らせた。
「回復アイテムあげるから合流しよう」
「わーん、もう無理だよ死んじゃう!」
「大丈夫。ロッカーの中隠れて耐えて。今ひとりキルしたから」
「えっ、すごくない⁉ いつの間に……」
正直鶴咲の実力は、まだまだ伸びしろがありまくり……という感じだったが、終始楽しそうにプレイしているところがいい。
何とか鶴咲の周りにいた敵をまいて、鶴咲と合流する。
そうして援護をしながら一ゲームを終えた。
「待って、初めて十人以内残れた! すごい!」
ゲーム成績の画面を見ながら、鶴咲がこっちを振り返って興奮した様子で拍手をする。
今日の平坦な自己紹介では想像もできなかった満面の笑みを見ることができ、思わずドキッとしてしまう。
病気のことなど忘れてしまうほど、眩い笑顔。
本当に一週間が過ぎたら、彼女は凍ってしまうのだろうか。今の彼女からは、想像もつかない。
「あっ、やば」
そんな考えごとをしていたせいで、五回戦目ではいきなりうしろから敵に撃ち抜かれてしまった。
同時に鶴咲もやられてしまい、ゲームは終了。
彼女はすぐにヘッドホンを外して悔しそうな顔をこっちに向けるも、「楽しかったね」と笑う。
「次起きたときも、まだこのゲーム流行ってるといいな」
「え……」
「まあ、まだあと六日あるから、それまでよろしく!」
ビシッと親指を立てて当たり前のように強引に約束を交わす彼女。
そうか、鶴咲が次起きたとき……、季節は夏になっているのか。
なんと返したらいいのか分からず黙っていると、突然鶴咲が床に座って、俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇ、なんで私に〝師走〟だってこと、教えてくれたの?」
「えっ」
俺にぐっと顔を近づけて、鶴咲は「知りたいの」とせがんでくる。
その現実逃避の世界に突然現れた、眠り姫と呼ばれるクラスメイト。
この不思議な時間を、今は俺も思いきり楽しもうと思った。
「あー! やばいやばいやばい、ごめんもう無理かも!」
いきなり、チームで組んでいるユーザーたちに囲まれてしまったらしい鶴咲は、病棟で逃げ回っている。
いつの間にか離れてしまっていたようで、彼女がいる場所へと急いでキャラを走らせた。
「回復アイテムあげるから合流しよう」
「わーん、もう無理だよ死んじゃう!」
「大丈夫。ロッカーの中隠れて耐えて。今ひとりキルしたから」
「えっ、すごくない⁉ いつの間に……」
正直鶴咲の実力は、まだまだ伸びしろがありまくり……という感じだったが、終始楽しそうにプレイしているところがいい。
何とか鶴咲の周りにいた敵をまいて、鶴咲と合流する。
そうして援護をしながら一ゲームを終えた。
「待って、初めて十人以内残れた! すごい!」
ゲーム成績の画面を見ながら、鶴咲がこっちを振り返って興奮した様子で拍手をする。
今日の平坦な自己紹介では想像もできなかった満面の笑みを見ることができ、思わずドキッとしてしまう。
病気のことなど忘れてしまうほど、眩い笑顔。
本当に一週間が過ぎたら、彼女は凍ってしまうのだろうか。今の彼女からは、想像もつかない。
「あっ、やば」
そんな考えごとをしていたせいで、五回戦目ではいきなりうしろから敵に撃ち抜かれてしまった。
同時に鶴咲もやられてしまい、ゲームは終了。
彼女はすぐにヘッドホンを外して悔しそうな顔をこっちに向けるも、「楽しかったね」と笑う。
「次起きたときも、まだこのゲーム流行ってるといいな」
「え……」
「まあ、まだあと六日あるから、それまでよろしく!」
ビシッと親指を立てて当たり前のように強引に約束を交わす彼女。
そうか、鶴咲が次起きたとき……、季節は夏になっているのか。
なんと返したらいいのか分からず黙っていると、突然鶴咲が床に座って、俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇ、なんで私に〝師走〟だってこと、教えてくれたの?」
「えっ」
俺にぐっと顔を近づけて、鶴咲は「知りたいの」とせがんでくる。