「ええっ、いいの⁉」
 俺の言うことにいちいち大きな反応を返してくれる鶴咲。
 天真爛漫を絵に描いたような彼女を見ていると、ますます俺なんかと今二人きりでいてくれる理由が分からない。
 まあ、でも、俺と仲良くしてくれているゲーム仲間も、リアルでは交じり合わないような人たちばかりだし……。
 鶴咲と俺は、まさにゲーム好きという共通点だけで繋がっている。
 ゲームの世界を、リアルの世界と比較することはナンセンスだ。
 そう思い直した俺は、パソコンを繋げ、慣れた手順でデドデにアクセスする。
 ゲーミングチェアは鶴咲に座ってもらい、俺は床座りでミニテーブルにパソコンを置いてプレイすることにした。
「わーん、師走と一緒にゲームしたいけど、手元も見たいよー」
 鶴咲がくるっとこっちを振り返りながら嘆くけれど、俺は正直ほっとしていた。
「……見られると緊張するから、この方がいい」
「いつも十万人以上に見せてるのに、何言ってんの!」
「それとこれとは別だよ……」
 ぼそぼそと返しながら、俺は鶴咲とペアを組んでゲームに参加した。
 そういえば、こんな風にリアルの友達とオンラインゲームに参加したのは、人生で初めてのこと。
 鶴咲が選んだキャラは屈強な兵軍のキャラで、俺はいつも通りモブキャラ感満載な、チェックシャツ姿の青年を選んだ。
「ずいぶん強そうなの選ぶね」
「私、現実とかけ離れたキャラになりたいの!」
 笑顔で答える鶴咲に「なるほど」と返す。
 少しばかりワクワクしてしまっているのは、否めない。
「神代君! 先に言っておく、超足引っ張りますごめんなさい」
「好きにやっていいよ、援護するから」
「えぇ、何そのイケメン発言! あ、この辺で降りるのどう?」
「オッケー」
 先に彼女が降りたマップにヘリを止めて、上空から落下する。今回選んだステージは病院の廃墟で、灰色の空が広がる薄暗い雰囲気の中、いきなり戦いが始まる。
 銃を持って病院の中に一緒に入るも、建物に病院の面影はほとんどなく、窓のガラスは全て割れ、床には血痕やガラスの破片が散らばっている。
 ちらっと鶴咲の方を見ると、かなり真剣な顔で画面を見つめていた。
 本当に、ゲームが好きなんだな……。
 好きなものに、見た目も性別も年齢も関係ない。
勝つ、という同じ目的を果たすために、クリエイターが作り上げた世界を全力で楽しむ。