窓の外には満開の桜が見えていて、美しい和の景色とのギャップが激しいけれど、何だか部屋の居心地はよくて悔しい。
「あはは、オタク丸出しの部屋でごめんね」
「いや、むしろ落ち着くわ……」
 ザ・女子なピンクの部屋だったら、ずっとそわそわしてしまって、落ち着かなかっただろう。
 俺は案内されるがままにゲーミングチェアに座らされると、彼女は勉強机に置いてあった椅子を隣まで運んできた。
「パソコンのスペック低いけど、許してね」
 なんて言いながら、彼女は隣でいそいそとパソコンにログインし、セッティングを始めていく。
 問答無用で俺がプレイする流れになっているが、まだ人前でプレイする覚悟が決まっていない。いや、ここまで来ておいて断る訳にもいかないが……。
 恐る恐る俺にしてほしいことを質問してみた。
「な、何のプレイが見たいの?」
「もちろんデッドオアデッド! 師走の動画がバズったきっかけのゲームだし!」
 目を爛々と輝かせそう言い放った彼女。
 デッドオアデッド、略して〝デドデ〟は、二年くらい前から長く人気のある、海外発のサバイバルゲームだ。三年前に配信されたゲームながら、今もユーザーは多く盛り上がっている。
廃墟が舞台で、世界中から百人のユーザーが参加し、最後のひとりになるまで銃で戦い抜くというシンプルなルールで、俺はこのゲームで日本ランクの上位10%に食い込んでいる。
 中三の終わりからプレイ動画を地道に上げ続けていたところ、誰かがSNSで紹介してくれて、そこから一気に登録者が増えたのだ。
「本当に観てくれてるんだ……」
 驚きつつそうつぶやくと、鶴咲は「古参ですから!」となぜか自慢げに返してきた。
「私もデドデ一年やってるんだけど、まだ一度も残り十人にも入れたことなくてさ……」
「マップとかちゃんと見てる?」
「え、そんなにしょっちゅう見なきゃダメなの?」
「いや、かなり基本だと思うけど……敵の位置を常に把握しないと」
 そう言うと、鶴咲はガーンという効果音が出そうな顔をして、基礎もできていなかったのか……と落ち込んでいる。
 本当に、ゲームが上手くなりたいと思っているんだろう。
 そんな彼女の様子を見て、俺は椅子から立ち上がると、自分のリュックサックを漁った。
「あのさ……、一緒にやる? 見てるだけじゃつまらないでしょ。俺、ノートパソコン今持ってるから」