「あ、危なかった……! 見てないよね?」
 急いでベッドに戻りつつ問いかけると、禄は怪訝そうに眉を顰めた。
「見てないけど……何隠したの? メモ?」
「秘密!」
 禄は私が背中に隠したものをじっと覗き込んでくるけれど、身をよじって何とか隠す。
 じつはゲームのメインキャラとなる天使の絵を、メモの切れ端に描いていたのだ。
 絵心がないのでめちゃくちゃ下手くそだし、何だかゆるキャラみたいになってしまったので恥ずかしいから見せたくない。
「何のメモかも教えてくれないの」
 しかし、禄があまりにしゅんとした顔で聞いてくるので、心が揺らぐ。
 私はうーんと斜め先を見上ながらよくよく考えて、説明する。
「……私が作ってるゲームのキャラの、デザインラフ」
「なるほど。どんなキャラにしたの?」
「て、天使……」
 いろいろネタバレしてしまってるけれど、まあいいや。
 開き直った私は、イラストを隠しながらもしぶしぶ答えた。
 すると、禄は不思議そうな顔で、「なんで天使にしたの?」とさらに聞いてくる。
「禄が神様だから」
「ふ、まだそれ言ってるの?」
 真剣な顔で返す私に、禄は呆れたように苦笑を漏らした。
 私は頭の中に自分が描いた天使を思い浮かべながら、心の中で理由を補足する。
 天使にした理由は、五年後、もし禄がこのゲームを開いたとき、力が抜けちゃうくらい可愛いキャラがいいだろうと思ったんだ。
 あと、禄のお守りになってくれるようなキャラは何かなって考えたとき、真っ先に天使が出てきたから。
「だって禄は、私の神様だもん。やっぱり」
「それ、俺の名字に引っ張られてるだけでしょ……」
「違いますー」
 冗談としてしか受け取ってくれないけれど、私にとって、禄はやっぱり神様みたいな存在だよ。
 禄が現れてから、私の一日は一年分みたいに濃くなった。本当に、魔法みたいだったよ。
 どんな未来も受け入れて、前に進もうと思えたのは、間違いなく禄と出会えたから。
 私だってできれば、五年以内に目覚めて、禄と一緒にこのゲームをやりたいし、完全に諦めている訳でもない。
 でも、五年以内に治療法が見つかることは、どんな神様でも難易度高めな奇跡だと思うから。
「禄、未来で会おうね」
 私は再び、夕焼けだんだんで交わした約束を口にする。
 禄はうんと力強く頷いて、「約束する」と優しい声で返してくれる。