開く勇気がなかったけれど、画面に映っているキャラクターのゆるさに、思わず微笑む。
 スタート画面には、透過作業もかなり雑な、手作り感あふれるドット絵の天使のキャラクターがふよふよ浮いていた。羽と輪っかがついているけれど、体はクリオネのようにも見える。
 そういえば、永久コールドスリープに入る前、メインキャラは天使にすると言っていた。
 二頭身のキャラだけど、クリッとした目や愛嬌のある雰囲気が、どことなく青花に似ていると思った。
「分かったよ。逃げずに開くよ……」
 俺はひとり言をつぶやいて、意を決してスタートボタンをクリックする。
 すると、天使が勝手に自己紹介のテロップを流し始めた。

【私の名前は〝aoca〟です。皆さんの選択を導いて、世界を救ってさしあげましょう】

「なんか、全体的にゆるいな……」
 青花らしいキャラクターは、やはり自分自身がモデルだったようだ。
 どうやら簡単な選択ゲームの一種で、世界を救うために勇者設定の主人公があらゆる選択をしていくようだけど……。
 ゆっくり青花が作った世界観を楽しみながら、俺は【次へ】のボタンをクリックする。
 すると、すぐに選択肢が現れて驚いた。

【私、aocaは永久に眠り続ける世界平和の元門番であり、いたずら好きの天使でもあります】
【さて、私を起こせば世界を救える可能性もありますが、いたずら好きのため未来の保証はできません。ここからは賭けになりますが、どうしますか?】

▼叩き起こす
▼起こさない
▼分からない

 いきなり三つの選択が出現し戸惑うも、青花らしい問いかけに、クスッと笑みがこぼれる。たしかにこの天使、いたずら好きにも見えてきた。
 一分ほど真剣に考えて、俺は【分からない】を押す。
 するとすぐに、不正解を表すチープな音が流れた。

【あなたの優柔不断な判断が世界を滅ぼしました。ゲームオーバーです。仕切り直して、新しい人生を歩みましょう】

「えぇ……何だこれ。もう終わり……?」
 あっさりすぎる終わり方に、思わず突っ込みを入れる。
 今度は【叩き起こす】を押してみる。
 するとまた、ブーッという不正解音が鳴り響く。

【あなたの勢い任せな判断で、天使のいたずらが暴走し未来は滅びました。ゲームオーバーです。仕切り直して、新しい人生を歩みましょう】

「……また終わりか」