課金ゲームが好きなのか、ストーリー性のあるゲームが好きなのか、それともシューティングゲームや刺激的なゲームが好きなのか……。
 それによってだいぶ話の内容が変わってくる。
「FPS中心かな」
「そうなんだ! じゃあ、師走知ってるよね? 動画観たことある?」
 興奮しながらそう言うと、神代君は気まずそうな顔をする。
 ん? なんで? まさか師走のアンチとか……?
 これは師走の魅力を私が教えなければならない!
「師走はね、実況の〝間〟がちょうどいいんだよね。ゲームの製作者側の意図も予想しきってるから、そこが面白い」
「へ、へぇ……、そうなんだ」
「師走がゲーム作ったりしたら、絶対面白いのできるだろうな」
 熱く語り終えたあとにそんなことをぽろっとつぶやくと、彼は一変して真剣な表情になる。
「本当にそう思う?」
「え?」
「信じてもらえないかもだけど、じ、じつは俺、〝師走〟なんだよね……」
「え……?」
 何言ってんだこの人……。
 いくら師走が顔出ししていないからって、そんな身近に人気動画配信者がいるだなんて信じられない。
 しかも、会ったばかりの女にそんなことを暴露するだなんて現実味がない。
 嘘をついて興味を引かせようとしているのかな?
 いやでも、私の興味を引いたって仕方ないし……。
「ちょっと人差し指の付け根見せて!」
 顔を知らない師走の特徴を探してみようと思い、私は乱暴に神代君の手を掴んだ。
 そして、目の前の確たる証拠に、わなわなと震えながらつぶやく。
「ここにほくろがある! しかも、たしかに声も、似てる……」
「ほくろ? あ、本当だ」
 知らなかった、というように神代君は自分の指を眺めている。
 この低すぎず高すぎず少し眠たげな声も、たしかに師走に似ている気がしてきた。
「ちょっとYチューブのログイン画面見せて!」
 鬼気迫る私を見て、彼はスッとスマホで動画サイトにログインすると、私が毎日見ている師走のアイコンが掲載された編集ページを見せてくれた。
 まさに、膝から崩れ落ちそうなほどの感激が、私を襲う。
「神じゃん……、神と出会ってしまった……」
「え……」
「起きててよかった……」
 この一週間の初日に、こんなに色濃いことが起きるだなんて。
 学校に来てよかった。そんなことを、単純にも思ってしまったのだった。