数秒の沈黙が流れて、私は震えた声で再び問いかけた。
「冗談、だよね……?」
 その問いに、二人とも何も答えない。
 全身が震えて、起きてるのに夢の中みたいで、まるで全然違う世界にトリップしてしまったように感じた。
 胸のど真ん中に突然大きな穴が空いたような、巨大な喪失感に襲われる。
 待って、私、この悲しみを乗り越えられる方法を、全く知らない。
「おばあちゃん、本当に死んだの……?」
 はらはらと、信じられないほど涙があふれてくる。壊れた心を守るように、止めどなく。
 私は思わず布団の上から自分の太ももを思いきり拳で殴った。
「何それ……、何この最悪な世界線……、生きてたって意味ないじゃん……」
 何度も何度も、バフッと音を立てながら、布団が沈む。
 ちゃんと太ももと拳に痛みを感じて、これが夢ではないと分かってしまった。
「青花、ごめん俺……約束したのに」
「生きてたって意味ないじゃん‼ 私‼」
 禄の言葉を遮り、ほとんど絶叫に近い声を出して泣き崩れると、お父さんが私の肩を両手で押さえつけた。
 人目も気にせず慟哭する私にあたりは騒然となり、バタバタと看護師さんたちが駆けつけて部屋を覗いてくる。
 暴れている私を何とか止めながら、お父さんは真剣な顔で訴えかけてきた。
「そんなことを言ったら、おばあちゃんが悲しむだろう!」
「お葬式は……? おばあちゃん、いつどこで亡くなったの……?」
「三月二十日。肺炎だった。神代君が発見して連れて来てくれなかったら、おばあちゃんはひとりで亡くなっているところだった。通夜もお葬式ももう、終わってる……」
 何それ。私、その間も、バカみたいに眠ってた訳……?
 私は心臓あたりを押さえながら、過呼吸にならないよう必死で息を吸ったり吐いたりする。
 お父さんはそんな私の背中を摩りながら、ゆっくり様子を伺いながら入ってきた看護師さんに、「すみません、泣いたせいで心拍数が上がってるかもしれません」と冷静に状況を説明している。
「鶴咲さーん、大丈夫、大丈夫だからゆっくり吸ってー、吐いてー。今、守倉先生が来ますからねー。大丈夫ですよー」
「はっ、はあっ、はあっ……」
 いったい何が、大丈夫なんだろう。私は少しも、大丈夫なんかじゃない。
 悲しくて悲しくて悲しくて、胸が千切れそうだ。
 頭の中に、おばあちゃんと過ごした思い出が流れ込んでくる。