「きゃっ!!」

氷室さんの冷たい手が、自分でもあまり触れない場所にと声をあげてしまった、と同時に私の足がびくっと反射で動いてしまい、今まで無音だったテレビから、急に大音量が流れ始めた。
私の足元にリモコンが落ちているのが見えた。
きっと私が間違えて足でスイッチを押してしまったのだろう、と容易に想像ついた。

「ご、ごめんなさい……!」

私は急いで足でリモコンを自分の手の位置まで手繰り寄せて、テレビを消そうとしたが……。

「いいよ、そのままで」
「でも、うるさいですよね」
「いや、大丈夫だから」
「でも……」
「優花」

樹さんは、軽くパニックになった私を宥めながら、私の服の裾を丁寧に整えてくれ、さらにはゆっくりと私を起き上がらせてくれた。

「今日は、これ以上はやめよう」
「えっ……!?」

私はこのタイミングで、ようやく樹さんの

「したい」

の意味に合点がいった。
それと同時に、不安にもなった。
樹さんが私の体に触れてから、やめようと言った。
その理由は、一体何だろうか……と。

「あの……樹さん……ごめんなさい……」
「どうして、優花が謝る?」
「だっ……だって……私の体が……その……」

綺麗じゃないからですよね、と続けようとしたけど、言葉がうまく出てこない。
いつもなら自虐ネタとしてすぐに出てきたはずなのに。
どうしてだろう、樹さんに言ってしまい、頷かれてしまうことが怖かった。
樹さんが、そんな私の本音に気づいたのかはどうか分からない。だけど

「優花、聞いて」

と抱き寄せながらこう言ってくれた。

「俺は、君を早く抱きたいと思ってる」

あまりにもストレートな告白に、私はまたもやどう答えていいか分からなかった。
なので、そのまま樹さんの胸に頭を埋めておくことにした。
樹さんは、くすっと笑ってから、私の頭を1回、2回と撫で、それから私の耳元で

「ちゃんと、特別な日にしよう」

と囁いてきた。
その瞬間、私の体の中心から、ぶわっと熱いものが込み上げてくる感覚がした。

(何……この感覚……)

私が戸惑ったまま黙っていると、樹さんから

「返事は?」

と催促されたので、気持ちだけでも伝われ……という思いを込めて、目眩がするほど大きく頭を縦に振った。
すると樹さんがまた、笑ってくれたので、私も釣られて笑ってしまった。