樹さんとのキスは、2回目。
まだ、受けるだけで精一杯だった。
それから、くるりと反転して、樹さんが上で私が下になった。

「ごめん……優花」
「え……?」
「変なことしないようにと、思ってた。でも……」

樹さんはそう言うと、私の頬に触れた。
優しく撫でてくれた樹さんの手が、そのまま私の唇の方に動き、樹さんの親指が、私の唇をなぞっていく。

(気持ちいい……)

好きな人の肌であれば、どんなにデリケートな場所でも触れてもらいたいと思うものだということを、初めて知った。

樹さんは、私をじっと見たまま、続きを話そうとしない。
私は、樹さんが何を望んでいるのか……分かったと思う。
でも、それを言葉にすることは躊躇われた。
もし違っていたら……?
勘違いだと言われたら……?
……ものすごくダメージは大きいだろう。
なので私は、ただ目を閉じるだけにした。
何も言わず。
5秒だけ、と決めた。

(5秒カウントして、何もなかったら、うたた寝しちゃってましたで終わらせよう)

と考えたから。
だけどそんなのは杞憂だった。
ものの1秒後、樹さんは私の唇をぺろりと舐めてから、吸い付くようなキスをしてきたから。