2人で浴衣を着て、駅で待ち合わせる。
2人で名物のさつまいもスイーツを食べ歩く。
たったそれだけで、俺の心が弾んだ。

しかも、優花の紺色の浴衣は、彼女の肌の白さをより強調させる。

(触れたい……)

情けないことに、ずっとそんなことばかり考えてしまった。
そんな欲が彼女に伝わってしまったのだろうか。

「そろそろ帰らないと、日が暮れますね」

太陽がまだ高い位置にあるにも関わらず、目的地に行く前に、優花は帰宅を促してきた。
とても焦った。
優花は、自分と一緒にいるのが嫌なのだろうかと、不安になった。
だからこそ、俺は優花の手を掴み、早く神社へと向かいたかった。
神様の存在は、完全に信じている訳ではない。
だけど、神聖な土地がこの地球上に少なからずあるということは、これまでの人生の中で教えてもらったことがある。
川越の神社がもしその内の1つだというのなら、俺はその力に賭けたいと思った。
そう思いたいと、思えた事は……生まれて初めてだった。

神社に着いた時、優花はニコニコと楽しそうにしてくれていた。
風鈴を眺めていた時、お参りをした時、そして名物の鯛みくじをした時も、彼女は笑顔だった。
俺も釣られて、口角が上がりそうになる。
こんな時間が長く続いて欲しい。
そう思っていたのに……。
ほんの少しだけ目を離してしまった間に、彼女は俺の前から消えてしまった。

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体調が悪くなりました。
先に帰ります。
申し訳ございません。
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体温を感じない、たった3行が送られていた。