昨日はありがとうございました。
話をしていた喫茶店の情報を送ります。
よろしくご査収ください。


たった3行の事務的な文章と、喫茶店のWEBサイトのURLだけ。
スタンプの1つも押されていない。
でも、俺はたった3行の簡素なメッセージを彼女から送られたという事実に心が踊った。

(どう……返そうか)

今までなら、特に考えずお辞儀をしているスタンプ1つを押して済ませていた。
そういったスタンプは、これまでは意識的に押していた。
もう、これ以上会話を続ける意思はない、と示すために。
でも、今回は違う。
このままお辞儀のスタンプを押すだけで済ませるだけは、嫌だ。
でも、この流れで

「いつにしましょうか?」

と送るのも、急すぎるのではないか……と、迷う。
実際、かつて俺が女性達から誘いを受けた時は、興味がないという理由で既読無視をしていたから。

(まずは、会話を続かせたい……)

何か、良いスタンプがないか、と自分のスマホのデータをくまなく探してみた。
彼女は、可愛いものが好きなのだろうということは、見せてくれたスマホのデータからよくわかった。
であれば、可愛いスタンプを送れば、もしかすると会話を続けてくれるのでは……という甘い期待があった。
そうして、期待を込めて送ったのが、勧められて購入をした
「ありがとだぴょん」
という吹き出しがついた、うさぎのスタンプだった。

本当に返事が返ってくるだろうか……と、その日の午前中は仕事が手につかなくなりそうになったが、お昼休憩時に返事を確認した時に

「本当に氷室さんですか?」

と、想定とは違ったものの、既読無視されずに何かしらの返事が返ってきたことがまず、嬉しかった。