優花の第一印象は

（何故、そんなに焦るんだろう？）

だった。
タワマンの入口で、熱中症の診察をした時もそうだったが、家に帰れと言ったにも関わらず、俺が騙されて引っ張り出された婚活会場の中で再会した時も、彼女は焦っていた。

ただ……俺は俺であの時、病人がいると聞いてきたはずだった場で婚活イベントが開かれ、しかも自分が勝手に参加者として登録させられていたことに、戸惑いと怒りを感じていた。
だから、彼女が近くに来た時に、つい力任せに外に連れ出した。

「何故、あんな場所にいたんですか？」

冷静にしようと、努めたはずだったが、押さえ込もうとしていた感情がつい言葉に漏れてしまった。
彼女は、目を丸くしながら、俺か感情的にそれっぽく捲し立てる言葉の数々を黙って聞いてくれていた。
でもそんな彼女の体調が、こうしている間に悪化の一途を辿っているのも分かっていた。

早く家に帰したいし、帰りたい。

相手のことを思うフリをしながら、自分の身勝手さを無意識に彼女にぶつけてしまっていた。

そんな状況が変わったのは、女性の金切声がロビー中に響き渡ってから。