そして今……私は氷室さんと2人で、小江戸の街川越を歩いていた。
たくさんの観光客で道は混雑しており、ちょっとでも離れているとすぐに逸れてしまいそうだったので……。
「森山さん、こっち」
氷室さんはそう言うと、私の手を取ってそのまま歩いてしまう。
(手汗!手汗が……!!)
こんなに間近で氷室さんの顔を見たのは、婚活の日以来だったが、浴衣と和風っぽい背景の効果もあり、綺麗な顔立ちが一層際立っている。
(氷室さん、本当に何でも似合うんだな……。それに比べて私は……)
浴衣に汗染みがついたらどうしよう、と気にしてばかりいた。
それに髪型。気合いいれてアップにしてみたけど、顔がよりまんまるに見えるのではないか。
気にし始めたら止まらなかった。
それに、すれ違う浴衣を着た女の子達が私にわかるように
「やばっ、イケメンと野獣?」
「ちっとも釣り合わない」
と言っているのも聞こえてしまった。
この人の側に、今こうしているのが恥ずかしい。
でも……手を離してと言うのも、何だか嫌だ……ともこの時思っていた。
「森山さん、口を開けて」
「え?」
氷室さんの声に驚いて口を開ける。
すると、口の中が急に甘くなる。
「お芋と……餡子……?」
「川越名物の和菓子だそうですよ」
ふと横を見ると、お店の人が試食を配っていて、氷室さんの手にも爪楊枝が刺さった和菓子のかけらがあった。
氷室さんはそのかけらを口に入れながら
「美味しいですね」
「は、はい……!お芋好きなので!」
(……違う!そうじゃないだろ!私が芋が好きかどうかなんてどうでもいいじゃない!)
私が自分の発言に後悔をしていると
「俺も、さつまいも好きですよ」
「本当ですか?」
「川越はさつまいもの産地と聞いていたので、楽しみにしていたんです」
そう言うと、氷室さんはこの和菓子が気に入ったのか、購入していた。
(ああ、そうか……)
氷室さんが私を川越に誘ったのは、こうやって、さつまいものお菓子を食べたかっただけなんだろう。
「はい、森山さん」
「ありがとうございます」
おしゃれな浴衣デートの相手としては申し訳ない程差がある私たち。
だけどそうではなくて、美味しいものを食べるのが好きな同士としてであれば、まだこの人の横にいてもいい気がした。
「あ、氷室さん、あの人が持ってるのを見てください!」
私がすぐ近くを通っているカップルが持っている、プラスチックのカップに入った細長いさつまいもチップスを指さした。
「私、あれ気になってたんです!今度は私が奢りますから、食べませんか?」
「良いですね。行きましょう」
そうして、私は氷室さんを連れて、あちこちのさつまいもスポットを巡った。
さつまいものソフトクリームに、シュークリームなど、本当にたくさんあるさつまいもスイーツを、お腹がはち切れそうになるくらい食べた。
それらは全部
「俺が払います」
と先に支払いを済まされてしまっていたが……。
「川越来て、よかったですね」
私は、さつまいもスイーツを思う存分堪能したことで、十分川越を満喫できたと思った。
これでもう、この日は終わりにしたいと、思った。
「そろそろ帰らないと、日が暮れますよね」
と、帰宅を促した。
ここに来るきっかけになったものを忘れたフリを、した。
ところが……。
「森山さん、何言ってるんですか」
「え」
「風鈴、見に行くんでしょう?」
氷室さんはさぞ当然、という顔をして、また私の手を取った。
たくさんの観光客で道は混雑しており、ちょっとでも離れているとすぐに逸れてしまいそうだったので……。
「森山さん、こっち」
氷室さんはそう言うと、私の手を取ってそのまま歩いてしまう。
(手汗!手汗が……!!)
こんなに間近で氷室さんの顔を見たのは、婚活の日以来だったが、浴衣と和風っぽい背景の効果もあり、綺麗な顔立ちが一層際立っている。
(氷室さん、本当に何でも似合うんだな……。それに比べて私は……)
浴衣に汗染みがついたらどうしよう、と気にしてばかりいた。
それに髪型。気合いいれてアップにしてみたけど、顔がよりまんまるに見えるのではないか。
気にし始めたら止まらなかった。
それに、すれ違う浴衣を着た女の子達が私にわかるように
「やばっ、イケメンと野獣?」
「ちっとも釣り合わない」
と言っているのも聞こえてしまった。
この人の側に、今こうしているのが恥ずかしい。
でも……手を離してと言うのも、何だか嫌だ……ともこの時思っていた。
「森山さん、口を開けて」
「え?」
氷室さんの声に驚いて口を開ける。
すると、口の中が急に甘くなる。
「お芋と……餡子……?」
「川越名物の和菓子だそうですよ」
ふと横を見ると、お店の人が試食を配っていて、氷室さんの手にも爪楊枝が刺さった和菓子のかけらがあった。
氷室さんはそのかけらを口に入れながら
「美味しいですね」
「は、はい……!お芋好きなので!」
(……違う!そうじゃないだろ!私が芋が好きかどうかなんてどうでもいいじゃない!)
私が自分の発言に後悔をしていると
「俺も、さつまいも好きですよ」
「本当ですか?」
「川越はさつまいもの産地と聞いていたので、楽しみにしていたんです」
そう言うと、氷室さんはこの和菓子が気に入ったのか、購入していた。
(ああ、そうか……)
氷室さんが私を川越に誘ったのは、こうやって、さつまいものお菓子を食べたかっただけなんだろう。
「はい、森山さん」
「ありがとうございます」
おしゃれな浴衣デートの相手としては申し訳ない程差がある私たち。
だけどそうではなくて、美味しいものを食べるのが好きな同士としてであれば、まだこの人の横にいてもいい気がした。
「あ、氷室さん、あの人が持ってるのを見てください!」
私がすぐ近くを通っているカップルが持っている、プラスチックのカップに入った細長いさつまいもチップスを指さした。
「私、あれ気になってたんです!今度は私が奢りますから、食べませんか?」
「良いですね。行きましょう」
そうして、私は氷室さんを連れて、あちこちのさつまいもスポットを巡った。
さつまいものソフトクリームに、シュークリームなど、本当にたくさんあるさつまいもスイーツを、お腹がはち切れそうになるくらい食べた。
それらは全部
「俺が払います」
と先に支払いを済まされてしまっていたが……。
「川越来て、よかったですね」
私は、さつまいもスイーツを思う存分堪能したことで、十分川越を満喫できたと思った。
これでもう、この日は終わりにしたいと、思った。
「そろそろ帰らないと、日が暮れますよね」
と、帰宅を促した。
ここに来るきっかけになったものを忘れたフリを、した。
ところが……。
「森山さん、何言ってるんですか」
「え」
「風鈴、見に行くんでしょう?」
氷室さんはさぞ当然、という顔をして、また私の手を取った。