(そうだ……雑誌でも読んでようかな……)

取り出したのは、つい手に取ってしまった、普段私が買わないような雑誌。風鈴と浴衣の女性の写真で作られた表紙が綺麗だと思った。
その雑誌では、川越の神社で行われているという、風鈴祭りの特集が組まれていた。

縁結びで有名なそのお祭りには
「天の川に恋の願いが届くように」
という願いが込められているらしい。

「綺麗だなぁ……」

雑誌に写っている写真は、男女のカップルや女子のグループの写真が多い。
男女であれば、縁がますますつながりますようにという想いがあり、女子同士であれば、これからやってくる縁を引き寄せたいという願いがあるのだろう。

もちろん、雑誌だからこそ美男美女揃いではあるのだが……きっとその地には、私なんかよりずーっとそういう縁が似合う、若い子達が大勢いるのだろう。
私は、眺めているだけで満足できると思った。

ところが。

「お待たせしました、森山さん」

背後から、急いでやってきたのか汗だくな氷室さんが走ってきた。

「え!?走ってきたんですか!?早く座ってください!すみません飲み物頼んでおけば良かったですね」

私は、偶然口をつけてなかったお冷を渡しながら、氷室さんに座るのを促した。

「いえ、大丈夫です……。森山さんをお待たせしてしまうのは申し訳ないので」
「そんなそんな、私なんて置物みたいなものだと思っていただければ」

そんなことを言っていると

「森山さん、その雑誌は……」

氷室さんが、ソファに座りながら、私が見ているページに気づいた。

「……お祭りですか?」
「はい。川越の。縁結びで有名みたいですよ」
「いつやってるんですか?」

氷室さんが、さっとページを眺めながらスマホを確認した。

「ああ……もうすぐ終わってしまうか……」
「そうみたいですね」

話は、それで終わると思っていた。
このタイミングで店員さんが来て、氷室さんはアイスティーを注文した。
そこからは、いつものように、友達としての、仕事を労うたわいもない……私からすれば拝みたくなるほどありがたい……おしゃべりが始まると思った。

だけど……。
「いつがいいですか?」
「……いつが良い……とは?」

私が首をかしげた。

「そろそろ特別な日になると思いますので……」