そこは、とりたててデートスポットとして有名ではなかったが、写真を見ただけで分かる、SNS映えの潜在能力高めの喫茶店。
これは、氷室さんと会う……というプレッシャー関係なく、とても興味がある。

(きっとカフェ仲間、アニメ仲間認定をされてる……ってことだよな……)

私は、これまでの氷室さんとのやり取りを脳内で振り返ってみた。
この時点で、メッセージは毎日続いていた。
氷室さんとの会話そのものがとても楽しい……ということも、自覚していた。

氷室さんは同年代という事もあり、子供の頃見たアニメやドラマの話で盛り上がることも度々あった。
つい先日も。
氷室さんが子供の頃にハマったというファンタジーのアニメのタイトルが、自分が激ハマりしたものと全く同じだった事もあり、つい気持ちが再燃して休日に動画サブスクサービスで徹夜で一気見してしまい、早朝にも関わらず氷室さんに報告する……という失態を犯している。

迷惑極まりない行為をしているにも関わらず

「俺も同じことをしました」

のメッセージと

「わかるにゃん」

スタンプのダブルコンボを送られてしまった……。

婚活をほんのちょっと頑張ろうと思っていた時期に読んだ、恋愛に関する自己投資本に

「男性は、落とそうとしている女には自分をより良く見せようとする」

と書いてあったことを、ふと思い出した。

アニメの話とゆるキャラスタンプをガンガン送って来られる私は、氷室さんからはそういう対象としては見られていない。
そうあるべきだ、と強く思った。
ほんの少し寂しいかも……という燻った小さな思いは、無理矢理なかった事にした。

そして、2回目のカフェの誘いはアニメの事も語れるお友達、として受けることにしたのだが、運命が大きく変わる予兆が出たのが、まさにこのカフェでの出来事だった。