さっきまでの怠さが、いつの間にか消えていた。
ここでかき氷を食べ、氷室さんと少し会話をしている内に。
あのタワマンから自宅まで、電車に乗っている時間を除いたとしても……1時間近くは炎天下の中で移動する必要があった。
もしも、あのまま1人で帰っていたとしたら今頃、ちゃんと無事に帰れていなかったかもしれない。
下手したら、途中で倒れていたかもしれない……。
それに気づけたのも、こうしてゆっくり休憩して、体調を整えることができたから……なのかもしれない。
(氷室さんにお礼言わなきゃ)
そう思って、氷室さんの顔を見ると、何やら氷室さんはメニューをじっと見ていた。
(何を見ているんだろう……)
そっと、覗き込むと、2種類のクリームソーダの写真が載っていた。
(すっごい可愛い……!)
透明なガラスに、キラキラ光るグリーンのソーダ水が注がれ、白くて丸いアイスがちょこんと浮かび、チェリーが飾られるという、一般的に知られているものでさえ、フォトジェニック的な可愛さがある。
それが、この店のものは、なんとアイスが動物の形になっているのだ……!
ソーダ水はグリーンとブルーの2種類。
まるで沖縄の海の色。
そして浮かぶアイスは、くまさんとパンダさんの2種類。
もちろん、チェリーはついている。
(これ、写真撮って、SNS用に加工して載せたいな……)
私はWEBデザイナーの勉強の一環で写真加工ソフトの使い方を覚えると、すぐ写真加工の魅力に夢中になった。
特に……オシャレなスイーツがあるカフェやレストランに来た時に、スマホで数枚食べ物を撮影し、家で加工してからSNSでアップすることが、いつしか趣味になっていた。
SNS自体は自分で楽しむためだけにアカウントを作った。
特に親や友人に知らせていたわけではない。
だけど、作った写真をコツコツアップロードしていく内にに、いつの間にかフォローが増えていた。
「楽しみにしてます」
というメッセージまで貰うようになった。
先ほど食べたかき氷は、緊張のあまり写真を撮り忘れてしまった。
(せっかくだから、頼もうかな……でも……)
ちらと、氷室さんを見る。
私が1杯分飲む時間まで、この人の時間を拘束するのは申し訳ない。
(また、別の日に来ようかな……)
と、諦めようとしたが、ふと気になった。
氷室さんはまだ、じっとメニューを見ている。
「あの……どうしました?」
「え?」
「ずっと、メニューを見ていらっしゃるから……」
「……いえ……何でもないです」
(何でもないのに、あんなにメニューを凝視するのかな……)
私がもしメニューを凝視してしまうとしたら、それはそのメニューの商品が気になって仕方がない時だ。
(……いや……まさか……)
いくらなんでも、私と氷室さんが同じ思考とは、限らないだろう。
そんなことを考えていると
「森山さん、最後ドリンク頼みますか?」
と、氷室さんの方から提案をしてくれた。
「はい!ぜひ!クリームソーダが飲みたいと思っていたんです」
「そうですか。では頼みましょう」
「氷室さんは、何飲みますか?」
「俺は……ブラックで……」
(え……?コーヒーのメニュー、見てないのに……?)
氷室さんはずっとクリームソーダのページばかりを見ていた。
本当は、クリームソーダを頼みたいのではないだろうか……と、私はお節介にも考えてしまった。
「クリームソーダじゃなくて良いんですか?」
と、聞いてしまうのが、1番簡単かもしれない。
だけど……。
「あの、氷室さん。実はお願いが……」
「お願いですか?」
「実は私、グラフィックとかWEBのデザイナーで、SNS用写真加工の勉強してるんですけど……」
これは本当。
嘘に本物を混ぜれば、限りなく本当になる。
「このクリームソーダ2つある様子、写真撮りたいんですよ」
これは、半分は嘘。
2種類並べると綺麗だろうな、と思うけれど無理に頼まなくてもいい。
「でも、私さすがに2つは飲めないかなと……」
これは、嘘。
普通に飲み切れると思う。
「なので、よければ1つ、貰ってくれませんか?」
そう言った私を、氷室さんは目を丸くして見ていた。
ここでかき氷を食べ、氷室さんと少し会話をしている内に。
あのタワマンから自宅まで、電車に乗っている時間を除いたとしても……1時間近くは炎天下の中で移動する必要があった。
もしも、あのまま1人で帰っていたとしたら今頃、ちゃんと無事に帰れていなかったかもしれない。
下手したら、途中で倒れていたかもしれない……。
それに気づけたのも、こうしてゆっくり休憩して、体調を整えることができたから……なのかもしれない。
(氷室さんにお礼言わなきゃ)
そう思って、氷室さんの顔を見ると、何やら氷室さんはメニューをじっと見ていた。
(何を見ているんだろう……)
そっと、覗き込むと、2種類のクリームソーダの写真が載っていた。
(すっごい可愛い……!)
透明なガラスに、キラキラ光るグリーンのソーダ水が注がれ、白くて丸いアイスがちょこんと浮かび、チェリーが飾られるという、一般的に知られているものでさえ、フォトジェニック的な可愛さがある。
それが、この店のものは、なんとアイスが動物の形になっているのだ……!
ソーダ水はグリーンとブルーの2種類。
まるで沖縄の海の色。
そして浮かぶアイスは、くまさんとパンダさんの2種類。
もちろん、チェリーはついている。
(これ、写真撮って、SNS用に加工して載せたいな……)
私はWEBデザイナーの勉強の一環で写真加工ソフトの使い方を覚えると、すぐ写真加工の魅力に夢中になった。
特に……オシャレなスイーツがあるカフェやレストランに来た時に、スマホで数枚食べ物を撮影し、家で加工してからSNSでアップすることが、いつしか趣味になっていた。
SNS自体は自分で楽しむためだけにアカウントを作った。
特に親や友人に知らせていたわけではない。
だけど、作った写真をコツコツアップロードしていく内にに、いつの間にかフォローが増えていた。
「楽しみにしてます」
というメッセージまで貰うようになった。
先ほど食べたかき氷は、緊張のあまり写真を撮り忘れてしまった。
(せっかくだから、頼もうかな……でも……)
ちらと、氷室さんを見る。
私が1杯分飲む時間まで、この人の時間を拘束するのは申し訳ない。
(また、別の日に来ようかな……)
と、諦めようとしたが、ふと気になった。
氷室さんはまだ、じっとメニューを見ている。
「あの……どうしました?」
「え?」
「ずっと、メニューを見ていらっしゃるから……」
「……いえ……何でもないです」
(何でもないのに、あんなにメニューを凝視するのかな……)
私がもしメニューを凝視してしまうとしたら、それはそのメニューの商品が気になって仕方がない時だ。
(……いや……まさか……)
いくらなんでも、私と氷室さんが同じ思考とは、限らないだろう。
そんなことを考えていると
「森山さん、最後ドリンク頼みますか?」
と、氷室さんの方から提案をしてくれた。
「はい!ぜひ!クリームソーダが飲みたいと思っていたんです」
「そうですか。では頼みましょう」
「氷室さんは、何飲みますか?」
「俺は……ブラックで……」
(え……?コーヒーのメニュー、見てないのに……?)
氷室さんはずっとクリームソーダのページばかりを見ていた。
本当は、クリームソーダを頼みたいのではないだろうか……と、私はお節介にも考えてしまった。
「クリームソーダじゃなくて良いんですか?」
と、聞いてしまうのが、1番簡単かもしれない。
だけど……。
「あの、氷室さん。実はお願いが……」
「お願いですか?」
「実は私、グラフィックとかWEBのデザイナーで、SNS用写真加工の勉強してるんですけど……」
これは本当。
嘘に本物を混ぜれば、限りなく本当になる。
「このクリームソーダ2つある様子、写真撮りたいんですよ」
これは、半分は嘘。
2種類並べると綺麗だろうな、と思うけれど無理に頼まなくてもいい。
「でも、私さすがに2つは飲めないかなと……」
これは、嘘。
普通に飲み切れると思う。
「なので、よければ1つ、貰ってくれませんか?」
そう言った私を、氷室さんは目を丸くして見ていた。