樹さんは、再び私の手を握ってきた。
その手が、微かに震えている。
私は、震えを止めるように、しっかり固く、樹さんの手を握り返した。
樹さんは、驚いた様子で私を見つめる。
私は、勇気を出して、樹さんの目をしっかりと見つめ返してみた。

この人の目が、本当に好きだ。
この人が、私を見て微かに口角が上がるのが、好きだ。
私は、そのまま空を見上げてみた。
樹さんを、隣に感じている自分が好きだ。
樹さんと一緒に見る景色が好きだ。

いろんな好きが、溢れてくる。
それは、彼と出会う前には知らなかった気持ちだ。

1人でも、それなりに楽しかった。
幸せだった。
それもまた事実。
それでも、彼と出会ったおかげで見つけた、数多くの好きは、私をより幸せにしてくれる。

樹さんは、どうだろう?
私と同じ気持ちに、なってくれるのだろうか……?
私と一緒にいると、幸せだと思ってくれるのだろうか……?

「樹さん」

私が話しかけると、樹さんの手が微かに震えた。

「何?」

声は、いつも以上に、優しい。
私は、体ごと樹さんに向けた。
そして、言った。

「樹さんに、許してほしいことがあるんですけど」
「……何を?」
「私が、樹さんと一緒にいるのを選ぶこと」

難しいことは考えずに、ただ心の中に表れてくれた、そのままの本音を。