口を開いた時、ぽつりぽつりと雨が降り出したことに気づいた。
でも、日本の雨のように、どしゃぶりではなかった。
むしろ霧雨を浴びているように気持ち良かった。

「優花、こっち」

樹さんは、私の手を引っぱった。
そのまま一緒に、鳥居を潜ると、そのまま拝殿の屋根の下に入った。

「このままここで、様子を見よう」

真剣に空を見ながら言う、樹さんの横顔はやっぱりとても綺麗で、優しさに満ちている。

「ダメですよ」

私は、その顔に振り向いてもらいたくて、わざとむっとした顔をして、キツめに言ってみた。
予想通り、樹さんは戸惑いを隠せない表情で私の顔を見た。
私は、数秒だけそのまま表情をキープしたが、あまりの樹さんの戸惑いっぷりと、アロハシャツの組み合わせがおかしすぎて、大声で笑ってしまった。

「ゆ、優花……?」
「ごめんなさい、ついおかしくなっちゃって……あははは……!」
「え?何が?」
「樹さん……ここは神社ですから、ちゃんとお参りしてから雨宿りしましょうね……あははははは」

樹さんと付き合って初めて、大口あけて、腹抱えて笑ってしまった。