「ガハハハハハ、いやあ、愉快愉快」

ますます貫禄が出たケビンに、十数時間かけてつれてこられたのは、1階建の戸建……ケビンの自宅だった。
こちらの時差ぼけなどおかまいなしに、ケビンは俺を、大きなソファが置かれているリビングにひきずりこんで、ワインを勧めてきた。

(俺はちっとも愉快ではない)

もちろん、ワインなど飲めるはずがないと、俺は顔をしかめてしまった。
それに……。

「パパ〜笑ってる場合じゃないでしょう。怒ってるみたいよ〜」

ここにいるのは、ケビンだけではなかった。

「違うよ、マオ。彼は元からこういう顔なんだ」
「何だそっかー!」

(何故、あっさり納得する)

ケラケラと、楽しそうに笑う、ケビン譲りの笑顔を持つ黒髪と大きな瞳が特徴的な女性が、パイナップルを頬張りながら

「それで、この可愛い男の子、誰なの?パパ。」

と興味津々に俺を見つめてきた。
目尻の笑い皺が、彼女がどれだけ幸せな人生を過ごしてきたかを伝えてくる。

「彼はイツキ。私の日本での子供みたいなものだ」
「そっか。じゃあ私の弟みたいなもんか」

ケビンとマオと呼ばれた女性は、またお互い顔を見合わせると、同時にガハハハと笑った。
俺は、ケビンの言葉に泣きそうになるのを堪えるので必死だった。

このマオこそ、後に俺の遺伝子を継いでしまった子供……マナの母親になる女性。
当時の年齢、40歳。