トリアージ。
それは、災害や事故など、多数の傷病者が発生した時に、傷病の緊急度や重症度に応じて治療優先度を決めることだ。
瞬時に赤、黄色、緑、そして黒のタグを使い、患者を振り分けていく。
まさに、命の砦とも言える役割だ。
日常生活の中でも常に必要とされる考え方でもある……と、ケビンは俺に重要さを都度叩き込んでくれた。

俺は、そんなケビンの下で働きながら、災害現場や事故現場でトリアージのスキルを磨いた。
そして、トリアージと日常的な医療に関する論文も、ケビンに見てもらいながら作成し、無事学会に認めてもらうこともできた。

こんな日々を過ごしていく内に、俺は実家の病院を継ぐことよりも、救命救急医としての道を確立していくことを夢見るようになった。
自分で、初めて選択した進路だった。

そんなトリアージで、俺はある日大失敗をした。
それは、ケビンがハワイに戻り、救命救急の腕を磨くため、別の救命救急センターに転職してしばらく経ってから。
……大規模な通り魔事件が起きた日だった。