患者のために、何をしてあげたいか。

それが、ケビンが教えてくれた、大事なこと。
最初は、意味が分からず、首を傾げてしまったが

「君が分かるようになるまで、私が助けてあげよう。思いっきり頼りなさい。そして努力しなさい」

と、言いながら、ケビンが俺の頭を撫でてくれた。
実父ですら、してくれたことはなかった。
俺は、気恥ずかしくなったが、同時に嬉しいと思ってしまった。

それから俺は変わった。
ケビンに言われた通り、余計なことは考えなくなった。
今、目の前の患者のためにしてあげたいこと。
それだけを考えて、行動に移した。
その結果、判断が早くなった。
それと同時に、救命救急の仕事に、やりがいを感じるようになった。

そんな俺が、救命救急の道を選び、ケビンからトリアージの極意を教わることになったのは……ごく自然の運びだったのだろう。