ただ、奇妙にも俺の周りには常にたくさんの人がいた。
同学年だけでなく、先輩や教授も頻繁に俺のところに来ては、話かけてきた。
女性の割合が多かった……気がする。

そして、その人達と行動を共にしていく中で、俺は気づいた。
身近な人が選んだものを、自分も選ぶことで、全て丸く収まることに。

例えば、授業。

「氷室くん、一緒に受けない?」

と聞かれれば

「いいよ」

と答える。
すると、必修以外の科目はすぐ埋まる。

「氷室くん、一緒にお昼にしない?」

と聞かれれば

「いいよ」

と言う。
すると、昼食の場所もすぐ決まる。

本当に大事なことは、ちゃんと指示が来る。
その指示通りにこなせば、きちんと評価される。
指示をどうこなすかだけを、考えればいい。

それ以外は求められたら、応える。
そうすると、周りの人が喜んでくれる。
家族も、そうだった。
だから、そういう生き方こそが俺にとっての正解だと思った。

そう開き直ってからは、苦痛だった大学生活が少しだけ楽になった。