後継者だと宣言されたのは、俺が難関中学の受験に合格してすぐ、氷室家の親戚が一同に集まる場でのことだった。

その難関中学というのは、日本でも最高峰の学校と言われるところ。
歴史が長く、将来のエリートが揃う場でもある。
そして……氷室家の人間は必ずその学校を受験し、落ち続けてきた。

とはいえ、別日に受験する、ほぼ同じレベルの中学校に受かってはいたので、氷室家の頭脳レベルは日本国内では最高レベルと言えるのだろう。

それでも、俺が今回合格した中学校へ、子供を入学させるのは氷室家の悲願だった。
成し遂げた俺を、次の後継にすることで、一族の大人たちが全員納得したそうだ。

俺にとっては、中学受験はさほど苦ではなかった。
教科書や問題集を1度やれば、すぐに知識や解き方は覚えることができたから。

そんなことも知らない大人たちによって、くだらない、クソすぎる理由により、俺の氷室家での人生は定められてしまった。
選択権は、俺にはなかった。