「まさか……お前……」
「お前……都合の悪いことは絶対隠すよな、絶対」

確信した。
橘か、こいつの息がかかったという、オトモダチが優花に接触するであろう、と。

「彼女には近づくな」
「それは、お前次第だな」
「……失礼する」

俺は、急いでその場を立ち去った。
橘の要望を聞く気は、もうない。
連絡先も、すぐにブロックをした。
そして橘は、俺を追いかけては来なかった。
だからこそ……嫌な予感がした。

もしも、優花にあの子の事や、過去の事が他人から知られたとしたら?
俺の家族や、かつての患者達のように、優花も……嘘をついたと、俺を責めるかもしれない。
責められる分には、まだ良い。

もし、離れたら?
嫌いだと言われたら……?

(耐えられない……)

今なら、間に合うだろうか。
事情をちゃんと説明すれば、理解して……くれるだろうか。
許して……くれるだろうか?

あの事件の後は、他人への恐怖と憎悪に満ちていた。
そして、自分勝手に怯えた。
距離を、自分から取った。

でも今回は違う。
距離を取られることが……怖い。

(話すしか、ないのだろうか)