「は?」

てっきりまた、テレビに出ろということだと思った。
それであれば……不本意だが……時間を空けてもいいと思った。
それで、優花を守れるのなら。
だけど、この男は俺の予測の斜め上の提案をしてきた。

(他の女と……寝るだって……!?)

「断る」
「そんなこと言わないで、頼むよぉ。俺の女のダチが、お前のファンでさ。1回お相手願いたいって言ってんのよ。胸がでかくて、あそこはきゅっとしまって……男にはたまらん体してる女だからさぁ。絶対、後悔しねえから、さ、な?」
「断る」

(後悔なら、もう何度もした)

本当に愛したわけでもない女性を抱いて、愛している女性を苦しませるかもしれないという……まさに今、この時も、後悔でいっぱいだった。

「じゃあ、この写真は渡せねえ」

橘は、優花の写真を懐に乱暴に仕舞い込んだ。
ぴりっと破れる音が聞こえた。

「すっかり、腑抜けになっちまったじゃねえの。これはこれで見ものだな。豚に恋する氷室先生。密着取材してみたいぜ。例えば……2人がどんなセックスしてるか……とか」
「これ以上彼女を侮辱してみろ……!」

俺は、怒りでどうにかなりそうだった。

「そんなこと言ってると……いいのか?」
「……何がだ」
「お前の、豚さんの方が……お前から離れるかもしれないぞ」
「何言って……」

そこで、ぴんっときてしまった。
同じ目をしたから。
最初に、あの子のことで脅しにきた、あの日と。