それから、また電話待ちの日々が始まった。
新卒1ヶ月に、派遣事務3ヶ月の私に良い案件というのは振ってこない。

ふと。
何故か、ある日思ってしまった。
たった3ヶ月だけ働いた、あの会社に行ってみようと……。
あの優しかった社員の人達はどうしてるんだろう、と気になった。
連絡先を交換しておけば良かった、と思えるくらい仲良くなった、年が近い人もいたから。

偶然を装ってお昼頃行けば、もしかしたらランチを一緒にできるかもしれない。
そう思い、久しぶりにあの時期に来たオフィスカジュアルに袖を通した。
最初はお気に入りだった、ボタンがついたおしゃれなシャツ。
でも、かつてとめられたボタンが、とまらなくなって。
仕方がなく、ボタンがない服を選び直す。
胸のあたりと肩のあたりが、なんとなくきついな、と思った。

そうして12時頃に、あの会社の付近まで行った。
目的の人達は、すぐに見つかった。
いつも一緒に行っていた店に、入って行ったのを見かけたから。
声をかけようと、思った。
けど、すぐやめて、私は建物の陰に隠れた。

いつもと同じメンバーの中に、1人だけ違う人がいた。
すぐ分かった。
私の代わりに入った人だと。
みんな、あの日のように笑っていた。
何も変わらず、楽しそうに。
そして、かつて3ヶ月だけ私の場所だったところにいた人は……おしゃれなシャツがとても似合う、綺麗な人だった。

こうして、私は悟ってしまった。
組織で働けば、おのずと「好き嫌い」の話になる。
その判定軸として「見た目」は逃れられないのだと。

では、どうすれば私は「必要」としてもらえる人間になるのか?
ダイエットも頑張った。
高い化粧水も使ってみた。
でも、それだけではまだ、足りなかった。

もう、私なんかダメなんだろう。
人生を諦めそうになった、そんな時。
偶然見た本が、私に希望の光をくれた。