「ってえな……何すんだよ、ああ?氷室先生?」

橘が、まるでヤクザのように突っかかってくる。
こうして、俺に恐怖を植え付ければ、思い通りに動かせると、橘は思っている。
実際俺は、確かに従ってきた。
だがそれは、恐怖からではない。
面倒だから、適当にあしらう。
それが1番、こういう男には効果があると思っていたからだ。
だが、今は……面倒がっている場合ではない。

「その写真を、返してもらおうか」
「冗談じゃない」
「何だと?」
「お前の、数少ない弱点を……みすみす逃すわけにはいかねえからな」
「彼女に……何をする気だ」
「さあ、どうしようか……確か名前は……そうだ……森山優花……だったかな」
「なっ……!?」
「何故、知ってるのかって?……俺をなめんなよ?たくさんの、オトモダチがいるんだから」

そのオトモダチによって、俺はこいつに過去を知られた。

「何が狙いだ、橘」
「さすが、氷室先生……頭が良い奴は、話が早くていいねぇ」

橘は、俺に優花の写真をチラつかせながら、耳元でこう言った。

「俺の知り合いの女と、寝てくれねえか?」