秘密は、秘密のまま。
それがお互いにとって、1番良い……。

心の中に、そんな痼を抱えたまま、優花の家に行く当日になってしまった。
俺は手土産を選ぶために、約束の時間よりもだいぶ前に、彼女が住むマンションの最寄駅に着いた。
すでに店の目星はつけていたので、向かうだけだった。

ところが、そこで思いも寄らない人物が俺を待っていた。

「よぉ……氷室先生」
「橘……」

さして仲良くもなかった、高校時代のクラスメイト。
そして……あの事件とあの子の事をどこかから嗅ぎつけて、俺を脅してきた男。