40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

その言葉を言った瞬間、樹さんの腕の力が弱くなった。
思わず、私は振り向いてしまい、樹さんの表情を見てしまった。

(どうして、そんな顔をするの?)

樹さんは、ほとんど表情を変えない。
せいぜい眉間や口角がほんの少し動くだけ。
樹さんの言葉が、私に樹さんの感情を教えてくれていた。
そんな樹さんの表情が……目が……私に訴えかけてくる。
不安だと。
怖いと。
言葉にしなくても、私に伝わってしまった。

どうしよう。
何を、次に言えば良い?
樹さんは、私に何を求めている?
私は、何をするのが正解なの?
答えが、分からない。

「どうすればいいんですか……?」
「優花?」
「私は、あなたのために何をすればいいですか?」

ずっと聞きたかった。
聞かなくてはいけないと、思っていた。
でも……聞けなかった。

どうしてあなたは、私のことを好きだと言うのですか?
どういう私が、あなたに好きだと言ってもらえたのですか?
これからどうすれば、あなたの好きだと言い続けてもらえるんですか?

言葉をぶつけて、樹さんに気づかれるのが、怖かった。
私という人間が、樹さんにとって本当は何の価値もない人間だということに。

「……私なんかに、あなたの側にいる価値……あるんですか?」

私がそう言った時だった。

「ただ、俺の側にいて欲しい」

樹さんは、私の横幅に広い体を締め付けるように抱きしめてきた。

「それだけで……いいんだ……」

樹さんは、私の首筋に顔を埋めて、そう囁いた。