勝手に泣いたのは、私だ。
樹さんは、何も悪くはない。
伝えなくては、と焦れば焦るほど、言葉が喉に突っかかってしまう。
ただただ、息だけが苦しいと伝えるように、洩れ続ける。
そんな私に樹さんは

「どうして、こんなことしたの?」

と、再び問いかけてくる。
でも今度は、とても優しい声だった。
そして樹さんは、私の背中を撫でながら

「言いたくなったらでいいから……」

とも、続けてくれた。
どう話せばいいのか。
何から話せば良いのか。
そもそも、こんなこと話すべきなのか。
考えて、考えて、そして考えた。
そうして、ようやく出てきたのが

「樹さんに嫌われたくなかったんです……」

と、なんとも情けない、今どきドラマでもあまり使わないような陳腐すぎるセリフだった。