(ど、どうしよう……)

おそらく、車酔いだろう。
1度そうだと思ってしまうと、どんどん悪化していくのが分かる。
朝ごはんを食べてこなかったのも、良くなかったのだろうか。

(やばい、吐きそう)

元々自分は、そんなに車酔いをする方ではなかったから、エチケット袋になりそうなものは持っていない。
次のパーキングエリアでトイレ休憩することは、すでに打ち合わせ済みだったが、まだ時間がかかる。
ちら、と樹さんの顔を見る。
高速道路ということもあり、集中してハンドルを握り、前を見つめている樹さんを、かっこいいと思うゆとりすら私の中には無くなっていた。
あまりの辛さに、涙が溢れてくる。

(こんな顔見せたくない……)

私は窓側に顔を向け、目を閉じ、どうにかパーキングエリアまで眠ることができないかも試してみたが、車の振動がより一層体内に響いてしまい、私の胃を刺激してくる。
このままでは、高そうな車内のシートを汚してしまう。
まだ、恥をかく覚悟でトイレに連れて行ってもらうようにお願いした方が良いかもしれない。

「あの、樹さん……」

意を決して、私が樹さんに声をかけた、ちょうどその時。
樹さんは、ナビの指示とは違う道に入り、そのまま高速を降りてしまった。

その理由は、ほんの1〜2分以内に到着したコンビニの駐車場に樹さんが車を停めてから

「行っておいで」

と声をかけてくれた時に、ようやく分かった。