「おぉ、綺麗なお嬢さんじゃないか!俺に何か用であるのか?」
綺麗……?
その言葉には不思議に思ったけど、言葉を続けた。
「その子を私に譲ってもらえませんか?」
「何だと!?」
「タダでとは言いませんよ。あなたがその人を買った金額をあなたに渡しますから」
こう言えば、きっと譲ってもらえる。
でも、その読みは外れた。
「そいつは無理だ!こいつはわざわざ俺が出向いて買ったんだぞ!」
倍にして渡したら、いいと言ってもらえるかしら……
物凄い量の視線を感じながら、そう言おうとすると……
「それより、どうだ?俺と気持ちいいことをしないか?」
肩を抱かれ、生理的に無理だと判断した私はその手を振り払った。
すると、顔を真っ赤にさせた貴族の男性がいた。
「何するんだ!俺は高貴な貴族だぞ!」
「それはお互い様ですよ。というより、私の家の方があなたの家よりは格上だと思いますけどね」
「お前みたいな小娘の家が格上?そんなわけないだろうが!」
私は結構有名なつもりなんだけどね。
もちろん、悪い意味でだけど……
「申し遅れました。私はミルフィー・アイルデアです。理解しましたら、その子を譲ってください。ちゃんとそれ分の小切手を支払いますから」
「アイルデア……?それって、まさか……」
顔がどんどん青ざめていく目の前の貴族の男性。
ようやく私が誰だか分かったみたい。
何度も同じことを言うのは好きではないんだけど……
「早く譲ってください。これ以上の会話は無用でしょう?」
「わ、かりました」
口調が最初と違う。
やっぱりアイルデア公爵家の影響力は凄いわね。
そう思いながら、金額を聞き、その男性にその金額分の小切手を支払った。
その後、男性はすぐに居心地の悪そうに顔をして、走り去っていった。
ふぅ、随分疲れる買い物だったわ……
疲れを感じながら、振り返った。
「これであなたは自由の身よ。好きなところに行きなさい」