お父様はどれだけ私が無駄遣いすると思っているのかしら。


「当たり前だけど、印象は良くないわよね」


泥棒扱いされたことも、よくあったもの。


その時のことを思い出して、苦々しい気分になった。


早く外に出ないとね。


こんなことを思い出してるだけで、時間がもったいないわ。


一旦私の部屋に行き、外に着ていくドレスを選んだ。


ドレスももう少し地味なものを買いましょう。


どれも派手すぎるわ。


ドレス以外は何も付けず、準備が出来ると家を出た。


謹慎中だったんだから、部屋にずっと籠もってたんでしょうけど、久しぶりって感じはしないわ。


まぁ、当然ね。


斬首される前も外に普通に出ていたもの。


「あの人、アイルデア公女様よね?」


「うわ、ほんと。目を合わさないようにしなければね」


「アイルデア公女様だ……」


「あの性格は嫌だけど、容姿は絶世の美女だよなぁ」


コソコソ聞こえてくる声。


きっと悪口だわ。


もうすでに印象が悪いのね、私は……


はぁとため息をついた。


結局、私の運命は変わらないのかしら……


弱気になったけれど、すぐに思い直した。


いいえ、変えてみせるわ。


もう酷いことはしないと誓ったもの。


これから変えていけばいいのよ。


「おい、命令を聞け!」


密かに決意していると、怒声が聞こえてきた。


その声がした方を見ると、怒りで顔を赤くしている太った貴族らしき男性とボロボロの服を着た青年がいた。


周りの人も私と同じように見ているけれど、助けようとはしない。


「何だ、その目は!奴隷如きがご主人様にそんな反抗的な目を向けていいと思っとるのか!?」


奴隷……


そういうことね。


この帝国の1番低い身分が奴隷だ。


奴隷はもののように扱われ、お金で奴隷を買う。


その奴隷に何を命じるかは分からないけど、貴族らしき男性は働かそうとしているみたいね。


きっと、私が思う以上に過酷な仕事をしなければならない。


奴隷を買う人にいい人なんていないでしょうし。


「俺は貴族なんだぞ!何をしても許される権力がある!買ってやったからにはしっかり働け!」


私も前はあんな風に権力を振りかざしていた。


前の私とあの貴族の男性が重なって見え、たまらない気持ちになる。


見てられない……


「少しいいですか?」


「あぁ、誰だ!?」


声をかけると、すぐに声に反応した貴族の男性が振り向いた。


途端に、何故か下卑た笑みを浮かべた。