「入って」
私は、いつの間にか
彼の部屋の前に来ていた。
初めて結ばれた
大切な場所。
ここが、全ての始まりだった。
「どうしたの?」
「ごめんなさい……」
「え……?」
言わないと。
もう、愛し合うことはできないと。
だって、私とあなたは
きょうだいかもしれないのだから。
まだ、この子をどうするか
その結論は出せてないけれど……。
「もう、刀馬くんとは会えない」
「何言って……」
私がそう言うと
刀馬くんは私の肩をつかみ
揺さぶってきた。
「ねえ、羽奏?嘘だよな」
やめて。
そんなことしないで。
私の赤ちゃんが
驚いちゃうから。
「羽奏!何か言えよ!」
「やめて!!」
私は力一杯
刀馬くんを突き飛ばした。
赤ちゃんを守るために。
私より大きくて重い
彼の体は
あっという間に
床に転がった。
彼の頭は
ドアの近くにあった
彼の机の角に
ぶつかった。