「どうして、返事くれなかった?」
「……うん……」

私は、真冬でもないのに
少し厚手のストールを巻いて
外に出た。

まるでCMのような
綺麗な家で育った刀馬くんに
今の荒れ果てた
ゴミだらけの私の部屋を
見せたくなかったから。

見せるつもりはないが
お守りがわりに
エコー写真は
ポケットに忍ばせた。

刀馬くんは
制服姿で
オートロック前にいた。

……そうか。
もう学校始まってたんだ。

少し肌寒くなった
澄んだ空気も
時が進んだことを
教えてくれる。

刀馬くんは
私の手を
当たり前のように掴み、
私はされるがまま
彼に手を委ねた。

彼の手には
汗が滲んでいた。

緊張してくれていたのかな。

そんなことを思うだけで
やっぱり嬉しくなる。
でも、私は彼に掴まれてない
もう片方の手で
エコー写真が入った
ポケットを触りながら
覚悟を少しずつ
決め始めていた。


もう会えない。
別れよう?

その言葉達を
告げるための。